日韓の関係は一方向から双方向へ

 こうした交流が行われながらも、日韓の美術には主従ともいえる関係性が存在していた。本展の日本側の担当学芸員・日比野民蓉は言う。「1945年まで、朝鮮半島の美術家が西洋美術や最先端のアートを学ぶ場所は主に日本でした。その後も韓国から日本への美術留学生は多かったが、日本から韓国への留学はほとんど見られない。その流れを変えたのが中村政人です。これまでとは逆パターンで、中村は1990年に韓国政府の国費留学生になり、美術大学の名門である弘益大学大学院へ進学しました」。

中村政人《トコヤマーク/ソウル》 1992年 韓国製床屋マーク、鉄他 個人蔵

 中村の留学以降、韓国に渡って美術を学ぶ日本人が増加。この流れには音楽、映画、ドラマなどKカルチャーの流行も影響しているのかもしれない。日韓の関係は一方向から双方向へ、つまり対等な立場でのコミュニケーションに変化しているともいえよう。

百瀬文×イム・フンスン《交換日記》 2015-18年 ビデオ 個人蔵

 近年の映像作品には「対等な立場」を表したような、あるいは問題提起しているような作品が多く見られる。田中功起《可傷的な歴史(ロードムービー)》(2018年)は、在日コリアン3世のウヒと日系アメリカ人にルーツを持つスイス人のクリスチャンが全国各地をめぐりながら対話を重ねる作品。百瀬文×イム・フンスン《交換日記》(2015-18年)は、日韓2人のアーティストが交換日記という形式を用いてコミュニケーションを図る構成になっている。

 日本と韓国。複雑な歴史を抱えつつも、いつもとなりにいる国として、ともに生きていくために大切なことは何か。アートを入口に、あれこれと思考をめぐらせてみたい。

横浜美術館リニューアルオープン記念店「いつもとなりにいるから 日本と韓国、アートの80年」
会期:開催中~2026年3月22日(日)
会場:横浜美術館
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:木曜日
お問い合わせ:045-221-0300
https://yokohama.art.museum/