マチュピチュ遺跡とワイナピチュ山 写真/hoyano/イメージマート
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(ライター、構成作家:川岸 徹)

世界を巡回し、54万人以上を動員してきたペルー政府公認の展覧会「CREVIA マチュピチュ展」が森アーツセンターギャラリーで開幕。ペルーの首都・リマにあるラルコ博物館が所蔵する、王族墓の黄金装飾品や祭祀道具など貴重な文化財約130点が公開されている。

高度な技術力をもつ天空都市

 “謎の天空都市”と呼ばれる「マチュピチュ」は南米ペルーのアンデス山脈、標高約2280mから2450mにかけての尾根に位置する。15世紀にインカ帝国の都市として建造され、約80年にわたって人々が生活を営んだ。だが、スペイン人の侵略によりインカ帝国が滅亡すると、マチュピチュの存在は歴史から消え、1911年7月24日にアメリカの探検家ハイラム・ビンガムによって発見されるまで、すっかり忘れ去られていた。

 マチュピチュの発見後、発掘調査が進められるにつれて、人々はマチュピチュが有していた高度な文明に驚かされた。遺跡は神殿と居住区で構成され、斜面には農作物を栽培したと思われる段々畑の跡。建造物にはカミソリの刃すら隙間に通さないほどの精緻な石積み技術が用いられ、畑の水路には高度な利水システムが見られる。

 そもそもこんな断崖絶壁の尾根の上に、建築の資材や道具をどのように運んだのだろうか。アンデス文明は文字を持たない文明であるため、マチュピチュの建造目的や役割など、いまだに多くの謎が残されている。

「CREVIA マチュピチュ展」会場 © NEON Group Limited. All Rights Reserved. / © MUSEO LARCO LIMA - PERU

 壮大な景観と歴史的価値、そして謎とロマンによって、世界中の人々の知的好奇心を刺激するマチュピチュ。2021年、アメリカ・ボカラトン美術館で開催された「マチュピチュ展」は高い評価を獲得し、世界各地を巡回。累計来場者数は54万人を突破し、2025年11月にはアジア初となる巡回展が六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで開幕した。

 ペルー政府公認となる本展覧会では世界的に有名な考古学博物館「ラルコ博物館」が所蔵する文化財約130点を展示。なかには王族の墓から出土した黄金の装飾品や神殿儀式で用いられた祭具など、ペルー国外初公開となる貴重な資料が数多く含まれている。

 展覧会ではこれらの文化財を、現地で語り継がれている古代の神話や儀式の物語と組み合わせて紹介している。ただ文化財を鑑賞するだけではなく、展示品の背後に潜む物語を探りながら、アンデスの世界観や死生観を複合的に理解していく。これが本展の面白さであり、世界中の観客を魅了している理由だろう。