過剰所有

 過剰所有は大人気の新しいものにお金がどれほど流れ込んでいるかを測る尺度だ。

 米国人は株式、なかでも特にテック株を猛烈に追いかけている。米国の家計は富の52%を株式で保有しており、2000年につけた最高記録を超え、欧州連合(EU、30%)や日本(20%)、英国(15%)のレベルを大幅に上回る。

 これと密に関連したシグナルが過剰売買だ。

 米国では過去5年間で日々売買される株式の数が60%増加し、1日当たりの売買高が180億株前後に達している。

 期限の短い株式オプションの売買に占める個人投資家の割合は3分の1から半分以上に上昇した。若者は「金融ニヒリズム」に陥り、家を購入することをあきらめたために投機にふけっている。

 ある日に株式市場が下落したら、個人投資家は翌日に衝動的に買いに回る。個人のお気に入りの銘柄は明らかだ。

 株式取引プラットフォーム「ロビンフッド」では、最も多く所有されている上位5銘柄はすべて「マグニフィセントセブン」に名を連ねる。

 また、7兆5000億ドルもの資金がMMF(マネー・マーケット・ファンド)のような投資信託に預けられていることから、規模の小さい米国投資家はまだ買い出動する力が残っているかもしれない。

 金融情勢は依然として緩和状態になっているため、流動性が株式をどんどん上昇させる。これがほとんど機関投資家に買い続けることを強いている。

 ここにはAIの高揚感に懐疑的な多くの投資家も含まれる。その結果として誕生したのが奇妙な新しい動物だ。完全に投資したクマ(弱気)がそれだ。

 熱心なAIファンは、心配が消え去り、楽観論が蔓延した時にピークが訪れるため、途切れることのないバブルの話題はこれがバブルではないことを証明していると主張する。

 そうかもしれないが、懸念は実際、ドットコムバブル崩壊の前から膨らんでいた。

 崩壊の1年前には、サンフランシスコ連銀が1929年の大暴落のようなバブル崩壊の可能性に言及した。

 多くのコラムニストとエコノミストや数人の機関投資家もこうした懸念を口にしていた。まさに今日のように、だ。