投資環境の整備が進んだ暗号資産、2026年以降の市場はどうなるか?(ZUMA Press)
(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)
2025年の暗号資産市場は、ビットコインを含め相場が伸び悩んだ。その一方で、価格動向だけでは測れない重要な転換点を迎えた。米国を中心に制度整備が進み、日本でも暗号資産を金融商品として再定義する議論が本格化したことで、市場のルールそのものが書き換えられつつある。本稿では、2025年の暗号資産をめぐる規制の再設計を振り返ったうえで、ETF解禁・分離課税移行といった構造変化を整理し、2026年以降の投資環境を展望してみたい。
相場こそ冴えない2025年だったが…
2025年の暗号資産市場は、相場こそ冴えなかったものの、各国で規制整備が大きく進展した「規制のターニングポイント」として位置づけられる1年だった。
第二次トランプ政権の発足当初、米政府は押収済みビットコインを売却せず保有を継続する方針を示し、市場では「国家によるビットコイン保有」が現実味を帯びるとの期待が一気に高まった。さらに、テキサス州をはじめ複数の州でビットコイン準備金法案が相次いで成立し、州レベルの公的保有が制度として動き出す兆しが見えたことも、長期的な需給改善を意識させる材料となった。
こうした期待に加え、暗号資産を財務戦略に組み込む企業が急増したことも相場を後押しし、10月にはBTC=125,000ドル(日本円で約1880万円)を突破して歴史的な高値を更新する局面が生まれた。
しかし、年後半にかけて市場は一転して失望へ傾いた。
新興ステーブルコインのペッグ崩壊やDeFi領域での不正流出が相次いだことで相場が下落し、暗号資産保有企業の財務リスクが意識され始めたうえ、連邦政府が構想するビットコイン準備金制度についても年後半まで目立った進展が見られず、期待先行で上昇していた市場が反転。その結果、11月にはBTC=80,000ドル台まで下落した。
このように相場で振り返った時には、2025年の暗号資産市場は、AI半導体ブームを追い風に堅調だったS&P500や日経平均とは対照的に、明確に劣後する形となった。
ただし、単年の相場だけを切り取って暗号資産の将来性を評価するのは適切ではない。むしろ、価格変動とは別に、米国を中心として制度面の整備が著しく進んだことが、中長期的には業界発展を支える最も重要な前進となったと言える。
暗号資産の分類基準の整備、ステーブルコイン法案の成立、ETF包括審査基準の導入など、価格の裏側では市場の信頼性を高める取り組みが着実に進展した。
そしてこの「規制の前進」という潮流は、日本でも2025年を通じて本格化した。金融庁ワーキング・グループでは、暗号資産を金融商品取引法の枠組みで整理する議論が進み、情報開示義務や不公正取引規制、仲介業者への業務規制など、従来とは異なるアプローチによる制度再構築が検討されている。
これらは、後述する暗号資産ETFの解禁や分離課税への移行にも直接影響する論点であり、日本市場にとって2025年は制度的な転換点に位置づけられる。
次章では、日本で進む規制見直しの議論について、金融庁WGでの最新動向を踏まえて整理していく。
