JBpressのYouTube公式チャンネル「INNOCHAN」で動画を配信しています。ぜひチャンネル登録をお願いします!
目次

2024年の台湾総統選では与党・民進党が政権を維持した一方、議会では過半数を割り、国民党や民衆党との「ねじれ」が生じました。さらに今年の秋の国民党主席選では親中色の強い鄭麗文氏が当選し、台湾の対中路線や政局の行方に注目が集まっています。

2028年の総統選を前に、台湾の民意はどう変化していくのか。中国ルポライターの安田峰俊氏が、台湾出身の東洋経済記者・劉彦甫氏に話を聞きました。3回に分けてお届けします。

※JBpressのYouTube番組「安田峰俊のディープアジア観測局」での対談内容の一部を書き起こしたものです。詳細はYouTubeでご覧ください。

(収録日:2025年12月3日)

野党党首に親中派

安田峰俊(以下、敬称略):今後の台湾の政治動向も注目されます。台湾では与党の民主進歩党と、最大野党の中国国民党の二大政党が拮抗していますが、2016年以来の民進党政権の長期化もあり、次の総統選では政権交代を望む声も大きいようです。台湾の政治情勢をどう見ていますか?

劉彦甫(以下、敬称略):民進党から国民党へ政権が変わるかどうかは、いまのところ五分五分です。民進党の頼清徳(らい・せいとく)政権が人気を落としていたので、10月前半までは国民党が優位に立てると思っていました。ところが、10月18日に行われた国民党の主席選で親中色の強い鄭麗文(てい・れいぶん)が当選し、国民党が中間層などから支持を得にくい状況になりました。

台湾の頼清徳総統(写真:AP/アフロ)台湾の頼清徳総統(写真:AP/アフロ)

安田:今年に入ってから、民間団体が提唱した国民党の議員に対する「リコール騒動」に民進党も乗り、それに完全失敗。民進党に批判が強まっていました。そうしたタイミングで国民党への期待も集まりましたが、主席選での鄭麗文氏の当選が裏目に出た印象です。民進党と国民党それぞれのダメな部分が出ており、オウンゴール合戦をやっている印象ですね。

劉:もともと国民党の中央は郝龍斌(かく・りゅうひん)という中間層を意識した言動を発する候補を推していましたが、党員投票では、中間層を意識する人よりは、自分たちの理念を体現する人物が選ばれがちです。党員の多くが60歳以上で、台湾より中国への一体感を強く持つ層でもあります。そのため鄭氏が選ばれ、党中央の思惑とずれた結果になりました。

安田:ショート動画での鄭麗文への支持拡大は異例で、一部では中国による後押しがあったのではと疑われたほどですね。

劉:鄭麗文の選挙手法は日本の参政党などに近く、ネット動画をバズらせて支持を集めている印象があります。