のぶの入社試験の面接時も編集局長の霧島了(野村万蔵)は思想歴を厳しく突いてきた。
「思想はそう簡単には変わらないんじゃないですか」(霧島)
こうも問い質した。
「教師を辞めたのも進駐軍に軍国主義者としてマークされたからなのではありませんか」(同)
のぶはここでも強く悔悟する弁を口にする。
「私は子供たちに立派な兵隊さんになれと説き、何人もの教え子を戦争に仕向けてしまいました。純粋な子供たちに間違った教育をしてしまいました。ですから、もう2度と教壇に立つ資格はないと思い、辞職しました」(のぶ)
この潔さに胸打たれた東海林明(津田健次郎)がのぶを擁護し、強く推したことから、採用となった。だが、現実的とは言えない。
のぶ以外の元軍国主義者たちはどう過去を乗り越えたのか?
暢さんは高知新聞で初の女性記者となったが、これもGHQの指導が背景にあってのこと。男女同権を促した。それくらいGHQの力は強大だった。
そもそもポツダム宣言第6条の中にはこうある。「日本国民を欺瞞し、世界征服に乗り出す過ちを犯させた権力、勢力を永久に除去する」。GHQは過去に戦争に加担した者も許さなかった。公職追放は1952(昭27)年まで続いた。
最終回の1回前だった第129回、のぶは自分に国家主義を教え込んだ女子師範学校の担任・黒井雪子(瀧内公美)と再会した。1988(昭63)年だった。
黒井は女学校の理事長になっていた。校長はのぶの同級生・小川うさ子(志田彩良)である。公職追放は終わっているから、非現実的な話ではない。ただし、黒井は恨みを買っていただろうから、教職に戻るまでには相当の苦労があったはず。放送時間に余裕があったら、その軌跡も観てみたかった。