『金持ち優遇』と言うが…
ちなみに、住民税の流出が深刻な東京都世田谷区が今年7月に発表した資料によると、世田谷区民で2024年度にふるさと納税をした納税者のうち所得4000万円超の割合は2.9%に過ぎないが、寄付の総額では全体の3割程度を占める。
高額納税者の税控除の上限額にキャップをかけることで、一部の自治体の税収流出に一定の歯止めがかかることは期待できそうだ。
しかし、税の専門家の中にはこうした規制に懐疑的な意見も少なくない。
「『金持ち優遇』と言うが、そもそも高額納税者は相応の税金を払っている。日本では、会社員と専業主婦(夫)の配偶者、大学生と中学生の子供の4人家族であれば給与収入が約360万円までは所得税が課税されない。一方で、給与収入1億円の独身者は所得税だけで4000万円近くを持っていかれる。ふるさと納税は高額納税者にとって一種の“ガス抜き”になっている」
近年、富裕層に対する所得税や相続税の課税強化が進む中で、「高額納税者の納税意欲の減退や海外のタックスヘイブンへの流出につながらないか」という懸念だ。
別の角度から、高額納税者の寄付動向を心配する声もある。
近年増えている地震や台風などの災害時に、ふるさと納税の仕組みを活用した災害地支援の寄付が増えている。目立つのが高額納税者による高額寄付だ。ある自治体のふるさと納税関係者が言う。