制度変更の行方は?(写真:umaruchan4678/Shutterstock.com)
2025年10月から業者によるポイント付与が廃止され、“ポイントのない世界”となったふるさと納税に新たな激震が走った。政府・与党が2026年の税制改正に向け、ふるさと納税の控除額に上限を設ける検討を始めたのだ。改正によって影響を受けるのは年収1億円以上の高額納税者と見られ、「庶民には関係ない」と思うかもしれない。しかし、税の専門家の中には高額納税者のふるさと納税に制限をかけることのデメリットを指摘する声もある。2025年の寄付のデッドラインとなる月末を控え、“ポイントのない世界”での新潮流やお得な寄付の方法も探った。
(森田 聡子:フリーライター・編集者)
どの程度の高額納税者が規制の対象になるのか
ふるさと納税は、応援したい自治体に寄付をすると年間の総寄付額から2000円を引いた額が住民税や所得税から減額され、寄付先の自治体から最大で寄付額の30%相当の返礼品がもらえるお得な制度。2024年度は寄付総額が1.2兆円に上り、同年度まで5年連続で過去最高を更新するなど年々存在感を増している。
一方で、百貨店のカタログのように魅力的な返礼品を並べて寄付を募る自治体間の競争が激化し、近年は返礼品の産地偽装や業者と自治体の癒着などの問題が噴出。所得が高い人ほど高額な返礼品が受け取れることから「金持ち優遇」との批判も根強い。高額納税者が多く住む都市部の自治体では大幅な税収減により、住民サービスの維持に支障を来すといった制度のひずみも露呈していた。
ふるさと納税の寄付額の推移(グラフ:共同通信社)
そこで、政府・与党は年内に公表予定の税制大綱に具体的な税控除の上限額や改正時期などを盛り込む方向で検討を進める。同時に、自治体が寄付の募集にかける費用も現行の寄付額の50%から引き下げ、仲介サイトへの手数料などを抑えて自治体の“歩留まり”を増やす検討も行う。
実際に規制の対象となるのはどの程度の高額納税者なのか。
税控除の対象となる寄付の上限額は、年収や家族構成、控除の適用などにより変わる。独身や夫婦共働きのケースで政府が試算した資料によると、年収300万円の人は2万8000円、同500万円の人は6万1000円、同1000万円の人は18万円、同1億円の人は438万円、同10億円の人は4524万円となっている。
このうち年収1億円以上で調整される可能性が高いという。