中国人観光客が満足するコンテンツがロシアにあるのか?
観光庁の『インバウンド消費動向調査』2024年度版によると、中国からの訪日観光客の支出の43%が買い物代で、これは他のアジア諸国と比べても高い水準だった。一方、欧米諸国からの訪日観光客は、宿泊費や飲食費に支出を充てる傾向が強かった。
要するに、日本にモノを買いに来ていたような中国人観光客が、ロシアでモノを買うのかという素朴な疑問が湧く。中国人観光客が満足できるだけのモノをロシアが取り揃えているとはまず考えにくい。モノでなければサービスで勝負といきたいところだが、そもそもモノを買いに来る中国人にとって、サービスは果たして魅力的なのか。
観光資源という点だと、大都市であるモスクワやサンクトペテルブルクには歴史的な建築物も多く、また地方に行けば行くほど豊かな自然が残されているのがロシアだ。反面で、ロシアには「ロシア人がいったん手を付けると、本来の魅力が台無しになる」というアネクドートがある。ロシアが実際、観光開発に長けていないことは確かだろう。
ロシアが実効支配を続ける北方四島のケースを考えてみよう。ウクライナに侵攻する前より、ロシアは北方四島の観光開発を進めると息巻いている。しかし、それは一向に進まない。開発には多額の資金が必要だし、運営にはノウハウも要る。その両方が欠けているロシアが、独力で魅力ある観光サービスを提供することなど、まず不可能だ。
そもそも日本の場合がそうであるように、例えば中国からのツアー観光客が増えたとして、その観光客を引き受けるのが在日中国人の企業であれば、実際の所得が日本社会に落ちたことには必ずしもならない。消費額が高い富裕層の個人旅行者を引き寄せたいのならば、それこそロシアにしかないサービスを提供できないと、観光客は訪れない。