ロシアは中国人観光客に何を期待しているのか?

 ロシアは中国人を呼び込むことで何を期待しているのか。それはやはり人民元の獲得ではないか。G7からの経済・金融制裁を受けて、ロシアは米ドルやユーロ、日本円といったハードカレンシーの利用を制限されたことから、その外貨繰りは急激に厳しくなった。代わりにロシアで信用力がある“外貨”として人気を高めたのが人民元である。

 ウクライナに侵攻して以降、ロシアは中国に急速に接近し、通商関係を深めている。具体的には、ロシアは中国に対して原油を中心とするエネルギーを輸出し、獲得した人民元でエネルギー以外のモノを輸入する。言い換えると、ロシアは輸出で稼いだ人民元を輸入で浪費しているため、それほど人民元の資金繰りには余裕はないと考えられる。

 中国からの入国者が増えれば、ロシア経済に相応の人民元がもたらされることになる。人民元のニーズの高まりに鑑みれば、中国からの入国者が増え、多額の人民元をロシアにもたらしてくれることは、極めて望ましいことだ。そこに降って湧いた日中関係の悪化は、中国人観光客をロシアに引き寄せる好機になると期待されよう。

 ちなみに、ロシアと友好関係にある近隣諸国、つまり中央アジアやコーカサス(含むアブハジア)の国々からの入国者は、コロナショック後も堅調に回復している。ただ、彼らはいわゆる外貨をもたらさない。なぜなら、中央アジアやコーカサスにおいては、歴史的な経緯からロシアの通貨ルーブルがハードカレンシー的な存在であるためだ。

 このように中国人観光客に期待するロシアだが、ロシアが提供できる観光サービスが中国人が望むコンテンツなのか定かではない。