中選挙区制導入にあたっての課題は?
当然ながら、残された課題も多い。
現行の289小選挙区をあらたに154中選挙区に編成すれば、それぞれの選挙区の面積はおよそ2倍に広がる。選挙区面積が広くなるにつれ、政治家は有権者から縁遠い存在となるとともに、政治家にとっても選挙活動は苛酷さを増し、それが新人候補の政治参入を妨げる恐れもある。選挙区面積の広域さを克服するためには、公職選挙法の改正による選挙実務の簡素化、与野党の公平な競争条件を担保する公設秘書制度の機能強化などが必須となろう。
一票の格差についても、最高裁の判断は衆議院選挙では有権者比で2倍未満を許容してきたところ、私たちの提案では人口比で1,643倍となっている。しかし、2026年にあらたな国勢調査の速報値が発表されれば、それに応じて選挙区の区割りも再編が迫られるであろう。
また、一票の格差は参議院の方が顕著であり、令和臨調が指摘するように、衆議院の選挙制度改革を参議院を含めた二院制改革と一体で再構築することも重要だろう。あわせて、行政区ごとに単記制(有権者が1名の候補者のみに投票する)で行われる自治体議員選挙との整合性も問われよう。
さらには、一票の格差は47都道府県制度を前提とするがゆえに生じるものであるが、すでに鳥取県の人口と東京都の人口は25倍のひらきがあり、1888年(明治22年)から137年にわたり変わらず存続している都道府県制度の耐用年数も問われてしかるべきである。
もとより、課題を列挙しても現実は前に進まない。私たちの問題提起が、平成の政治改革から30年をへて、あらたな選挙制度をめぐる議論を惹起する発火点になれば幸いである。
【訂正とお詫び】
記事掲載当初、「【区割り案】東京都(23区)」「【区割り案】鹿児島県」「【区割り案】沖縄県」の地図につきまして、島嶼部の扱いが不十分な地図を掲載しておりました。関係者、読者の皆様にお詫びして訂正いたします。地図は修正済みです。







