米書店チェーン最大手のバーンズ&ノーブル(B&N)が注目を集めている。 同社は「ヌック・カラー(NOOK Color)」という電子書籍リーダー端末が女性を中心に人気で、5月24日には低消費電力でバッテリーの持ちが良い電子ペーパーを採用した新端末を発表した。
同社を巡っては、5月19日にメディア・通信業界の重鎮と言われるジョン・マローン氏率いる米リバティメディアが約70%の株式を1株17ドル(総額約10億ドル)で買収すると提案した。これを受け、翌金曜日のB&N株は急騰し、週明けも大幅高となり話題になっている。
嬉しい誤算、突如売れだした電子書籍端末
米アマゾン・ドットコムの電子書籍端末「キンドル(Kindle)」や米アップルのタブレット端末「アイパッド(iPad)」などとの競争で苦戦を強いられた同社は昨年8月、株価の下落などを理由に、会社売却の可能性も含めた戦略的選択肢を検討すると発表。
取締役会に独立した委員から成る特別委員会を設置し、財務顧問や法律顧問から助言をもらいながら検討していた。
ところが、同社が昨年11月に249ドルで発売したフルカラーのタッチスクリーン電子書籍リーダー、ヌック・カラーが女性層を中心に売れるようになったのだ。
米ニューヨーク・タイムズによると、ある出版社では、ヌック・カラーからの女性誌の定期購読がアイパッドを上回った。女性には電子書籍に特化し、価格も手ごろなヌック・カラーのような読書専用端末の方がアイパッドよりも受けているという。
実力者に評価され人気急上昇
こうした状況の変化を背景に、ジョン・マローン氏がB&Nへの買収提案を決めたと米ウォールストリートは伝えている。記事によると、電子書籍の販売でB&Nのシェアは25%。依然としてアマゾンが圧倒的なシェアを持っている。
しかしマローン氏は、アマゾンにはその強い支配力があるがゆえに出版社が1社独占を嫌い、ライバルになり得る企業を応援すると見ている。
また同氏はB&Nの全米1300以上ある店舗とそのブランド力にも期待を寄せている。同業で業界2位の米ボーダーズ・グループが経営難に陥っていることも、B&Nに有利に働くと考えているようだ。