トランプ大統領への逆風が強まっている(写真:ロイター/アフロ)
今年1月の就任後、「アメリカ・ファースト」を掲げて内政・外交に強い指導力を発揮してきた米国のトランプ大統領。その勢いにかげりが見えてきました。打ち出す政策が不評で支持率は低下。各選挙で与党共和党は苦戦しているうえ、支持基盤である保守層も共和党から離反していると伝えられています。トランプ氏にとっては「魔の11月」とも言える状況。大統領の周辺で何が起きているのでしょうか。やさしく解説します。
(西村卓也:フリーランス記者、フロントラインプレス)
トランプ大統領の苦境、11月に次々と明らかに
トランプ大統領の苦境は、11月初旬の地方選挙で鮮明になりました。
米国では大統領選が4年に1度あり、その2年後には連邦議会や知事選などの「中間選挙」が実施されます。それ以外の年でもいくつかの選挙があり、いずれの年も投票は11月上旬。今年は11月4日が投票日でした。
米南部バージニア州と東部ニュージャージー州の知事選では、いずれも民主党候補が共和党候補を大差で破って勝利しました。選挙ではその時点での有権者の支持動向が表れます。今回は2期目のトランプ氏が初めて有権者の審判を受ける場でしたが、野党民主党の圧勝という結果になりました。
トランプ氏自身の分析による敗因は2つでした。投票用紙に「トランプ」の名がなかったことと、10月1日から史上最長の43日間続いた政府機関の閉鎖だというのです。2024年の大統領選でトランプ氏は、無党派層やヒスパニック系有権者の票の掘り起こしに成功し、当選に結びつけました。しかし、今回の選挙ではトランプ氏支持層の投票率が低かった模様です。
今回のバージニア、ニュージャージーの両州知事選の投票結果を細かく見ると、2024年の大統領選では共和党が勝利したものの、今回の知事選では民主党優位に変わった地域が目立ちます。
連邦議会の与野党対立で関連予算の成立が遅れたことによる政府機関の閉鎖では、大学生への奨学金支給や食料品の補助、国立公園の閉鎖など多方面に影響が出ました。特に首都ワシントンと隣接するバージニア州には連邦政府職員が多く住んでおり、休業を余儀なくされた政府職員らが、トランプ政権への不満を投票で示したと見られています。
一方、大都市ニューヨークの市長選では、民主党候補でイスラム教徒のゾーラン・マムダニ氏が当選しました。トランプ氏はマムダニ氏を「共産主義者」「反ユダヤ主義者」などと攻撃しましたが、自身が推す候補は惨敗。選挙後、トランプ氏はマムダニ氏をホワイトハウスに招き、和解を演出しましたが、自らの地元ニューヨークで敗れたトランプ氏の指導力低下は否めません。
このほか、カリフォルニア州でも州内の選挙区変更を巡る投票が行われました。その結果、民主党が連邦下院選で5議席増を見込める法案が賛成多数で可決されたのです。この動きは、民主党の州知事が主導したものでした。トランプ氏は、テキサス州などで共和党の議席増を見込んで区割り変更を進めましたが、民主党が対抗措置に出た形です。
大統領選や中間選挙に比べれば、今年は小規模な選挙戦ですが、各地で民主党の躍進が目立つ結果となりました。