非常戒厳令直後並みのウォン安

 今の水準は確かに、「非常戒厳令」の時並み、あるいはそれよりもウォン安とも言える。

 2024年12月3日、当時の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は非常戒厳令を宣言した。

 韓国の政治が不安定になることを警戒した外国人投資家などがウォンを売り、2024年11月末に1ドル=1300ウォン台だったウォンは、値を下げた。年末には1ドル=1477ウォンになった。

 最近の水準は、非常戒厳令前後の水準よりもさらにウォン安の日が多い。どうしてこんなにウォン安になっているのか。

 基本的には米国のドル高政策に加え、米韓の金利差が大きいままであることがある。

 米国の基準金利は3.75~4%であるのに対して、韓国は2.5%なのだ。だがそれだけでない事情もある。

稼いだドルをすぐに海外投資

 韓国紙デスクが説明する。

「ウォン安、ドル高になっているのは、簡単に言えば需要に対してドルが足りないから。企業も個人もドルでの投資に積極的だからだ」

 韓国は輸出依存度が高く、輸出が成長の源泉だ。半導体、造船、防衛関連など、引き続き輸出が好調な業種、企業も少なくない。貿易黒字が大変を占める経常収支も、1~9月の累計で827億ドルだった。

 ドルを稼いだ企業はウォンに交換して設備投資などにあてた。大量のドルが流入するから経常黒字が膨らむほどドル安、ウォン高になる傾向が強かった。

 ところが、最近は企業の動きが変わってしまった。先の韓国紙デスクは言う。

「投資先が国内工場よりも海外工場の方が多いという企業も少なくない。ドルを稼いでそのまま海外投資に使ってしまう」

「地政学的な問題など対外不安要因が多く、企業はできるだけ安全資産であるドルで保有し続ける傾向が強まっている」

 つまり、ドルを稼いでも、ウォンに替えなくなってきたのだ。

高市首相の政策を伝える韓国のビジネス週刊誌(筆者撮影)