米国株ブーム

 さらにもう一つ。個人の投資が急増しているのだ。株式、特に米国株投資だ。韓国銀行によると、1~9月の海外証券投資の金額は603億ドルだった。

 韓国での株式投資ブームは、日本とは次元が異なる熱さだ。特にここ数年感じるのが、米国株への関心の高さだ。

 テスラ、エヌビディア、AI関連企業・・・筆者の周辺でも、米国の有名企業に投資しているという韓国人は少なくない。

 韓国には早朝から米国の証券市場の動向を詳細に解説する経済ニュースチャンネルやユーチューブチャンネルが多い。個人が、韓国株だけでなく、米国株の動向にも敏感で、投資にも積極的だ。

 いくらドルを稼いでも、ドルで保有しておくか、海外直接投資や証券投資で海外に出て行ってしまう。

 なかなかウォン安が解消しないはずだ。

消えた公式、円との連動強まる

 韓国ではかつて、「経常(貿易)黒字が増える」ことと「株価が上昇する」ことは「ウォン高」を意味することが多かった。

 貿易立国だから、経常黒字が拡大すれば企業業績が向上し、株高になるという関係だった。

 だが、最近は、この2つの「公式」が崩れてしまった。

 もう一つ、最近のウォン安の特徴は、「円との連動制」だ。

 韓国経済は中国への依存度が高く、ここ10年ほど、ウォンや人民元と連動する傾向が強かった。

 ところが、今年の秋以降のウォン安については、「円との同調が鮮明になっている」という金融、為替専門家が多い。確かに最近は、円安とウォン安が同時進行するようになってきた。

 それもあってか、韓国メディアでは高市早苗首相の経済政策に対する関心が高い。円の動きがウォンの動きと直結するからだ。

 高市政権が「(責任ある)積極財政」を目指すなどと聞くと、円安、ウォン安では、と考えてしまうのだ。

 だから「サナエノミクス」という言葉が頻繁にメディアに登場する。日本の経済政策についての記事や解説も増えている。

 韓国ウォンがより人民元と連動していたころ、円はウォンに対しても安かった。今は、円もウォンも同じように対ドルで弱含みだ。

 だから、ウォンを基準にして考えれば、円は相変わらず以前と比べて「格段と割安」だ。

 だから、グアムやサイパンだけでなく、欧米への旅行の比べて日本への旅行は「お得感」が強い。

 日本政府観光局によると、2015年1~10月に韓国からの訪日者数は766万800人で前年同期比6.4%増だった。

 韓国人の日本旅行の勢いはますます強まっている。