ウェアラブル機器も急速に普及・発展

 もしAIが寿命だけ延ばして、健康寿命が追いつかなければ、高齢者の負担も家族の負担も増え、社会は持たなくなります。

 そこで注目されているのが、AIによる「予測ケア」と行動変容です。

 日々の活動量、食事の傾向、睡眠の質などを総合して、生活リズムの乱れを知らせるウェアラブル端末やスマート家電が急速に普及しています。

 シャープやパナソニックなどが展開するIoT家電は、データをクラウドAIに送り、その人に合った健康的なメニューや生活リズムを提案してくれるのです。

 こうしたAIが生活に溶け込んで初めて、寿命が延びることの意味が社会的に正しく評価されるようになるでしょう。

 この流れはやがて、「働きながら健康を維持する」という日本企業の常識(健康経営)も書き換えていきます。

 健康をどう守るかは永遠のテーマです。最近は大企業だけでなく中小企業でも、AIを使った健康データの見える化サービスを導入するケースが増えました。

 社員が日々どれくらい疲労しているか、組織全体としてストレス値が高まっていないか。

 これらをAIが傾向として分析し、マネジメント層に気づきを与えてくれる。ある意味、企業がデータに基づいて社員のウェルビーイングに責任を持つ時代になりつつあるのです。

 もちろん、AIが寿命や健康に介入することには倫理的な課題もあります。プライバシーデータの扱い、過度な監視への懸念、AIの判断への依存など、どれも簡単ではありません。