制度変更のたびに稼ぎ方を変えることになりかねない
実際の収入が多くて控除が減ってしまえば、その分、住民税の支払いを求められる。専門家は「今年の年末調整では(男性のように)子供の収入把握が曖昧なまま申請するケースが多そうだと聞いている。今年の所得をベースに計算される来年の住民税では、自治体から変更通知を受け取る人が増えるのではないか」と予想する。
この専門家が懸念を示すのが、103万円だった課税最低限を160万円にするために、基礎控除を95万円、給与所得控除の最低ラインを65万円としたような「恣意的な調整」だ。それが、もともと複雑だった働き方の壁をさらに複雑にしているという。
大学生の子供の場合を例に説明しよう。
今年の改正では所得税の基礎控除は上げても、自治体の減収につながる住民税の基礎控除の引き上げは行わなかった。従って、110万円程度の年収があれば住民税が課税される。
別途、社会保険も一定年収を超えると子供は親の扶養から外れ、自分で国民健康保険に加入して保険料を納めなければならなくなる。この年収ラインが10月から19歳以上23歳未満のみ130万円から150万円に引き上げられた。
国民民主党による年収の壁引き上げ提案の趣旨は「現役世代や若年層の手取りを増やす」というものだったはず。しかし、現実には、当事者の若者やその親は「変更の度に控除や扶養とのバランスを取りながら年収の最適解を探る」という厄介な選択を強いられる形になってしまっている。
こうした課題は社会保障との一体改革を行いながら税制をシンプルにしていかないと解消しないように思うが、近年の改革はその逆で、むしろ事をより複雑に、難解にしているように見える。