企業は社員の“自己申告”を信じるしかない

 3年生の長男には、バイトを始めた2年前から扶養から外れてしまわないように注意しており、今年も年末調整が近づいたタイミングで確認すると「去年と同じように年収が103万円に収まるように調整している」と聞いてひと安心した。

 ところが、男性アイドルグループの推し活に夢中となり、複数のバイトを掛け持ちしながらコンサート代や遠征費を稼ぎまくっている1年生の長女に年収の見込みを尋ねたら、「月ごとに金額が結構違うし、12月のバイトはまだ決めてないし」とすげなく返されてしまった。

 大学生のバイトは必ずしも支払い調書が配布されるわけではない。銀行振り込みなら後から金額が把握できるが、飲食や宿泊、イベントなどの短期バイトだと現金を手渡しされることもある。本人がちゃんと管理していないと収入の総額を把握するのは難しい。

「長女の方は、本人も分からない年収を親が知る由もない。結果として根拠のない推定年収を書かざるを得ず、後で税務署から突っ込まれて面倒なことにならないか心配している」

 こうした対応で後々問題が起こることはないのか。ある税務の専門家が次のように説明してくれた。

「特定親族特別控除に関しては、企業は社員の“自己申告”を信じるしかない。企業・税務署経由で子供の収入を把握した社員の居住地の自治体がマイナンバーなどで実際の収入と照らし合わせ、食い違いがある場合、住民税の変更通知書を送付してくる形になるだろう」