営業職の面接で「メンタル大丈夫ですか?」

 現在のスーパーのパートは、製薬会社を退職したIさんにとって3つ目の仕事だ。

「会社を退職してからは、しばらく兄貴がやっている会社を手伝いましたが、給料がかなり低かったので、貯金や退職金を切り崩しはじめました」

 兄の会社を1年半で退き、その後は半年ほど就職浪人。求人サイトで見つけた別の会社のMRとして1年ほど働いたが、契約社員だったために契約は1年で打ち切られた。

「今はどこの製薬会社も正社員のMRを減らして、契約社員みたいな人を増やしているんですよ。私の場合はちょうど60歳になってしまい、声がかからなくなりました。その後、同じような仕事を探しましたが、地元では見つかりませんでした」

 Iさんは60歳から年金を受給し始めた。受給額は月10万円。妻はまだ60歳になっていないので、未受給である。

「実は年金を受給するまで、自分がいくらもらえるか調べてなかったのです。なんとなく少ないというのは予想していましたし、60歳以降も働かなければいけないとは思っていましたが」

 Iさんは引き続きハローワークで仕事を探した。しかし、60歳を過ぎてからの就職活動は想像以上に困難を極めた。

「図書館や公共施設の館長みたいな仕事があったのですが、それらはマネジメント経験がないと応募不可でした。あとは工場や大変そうな営業の仕事しかなくて」

 営業の経験がいかせるかもしれないと、Iさんはとある住宅リフォームの営業の面接も受けたという。

「戸別訪問して飛び込み営業なんかをやる仕事だったみたいで、面接で『メンタル大丈夫ですか?』って聞かれて。相当メンタルが強くなければできない仕事なんだと思い、辞退しました」

 結局、Iさんにとって「やってもいいかな」と思える仕事はスーパーだけだった。