米国とベネズエラの間で緊張が高まっている(写真:AP/アフロ)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=58.5ドルから61.5ドルの間で推移している。週末のOPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)の決定を受けて原油価格は61ドル台に上昇したが、その後、60ドル割れしている。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
今週の原油市場の動きは?
OPECプラスの有志8カ国は11月2日の会合で12月の原油生産量を日量13万7000バレル増加させることを決定した。増産幅は10月、11月と同規模だ。
市場が注目したのは、有志8カ国が来年第1四半期の増産を停止すると発表したことだ。その理由について、ロイターは11月3日「欧米の新たな制裁によって輸出拡大に苦戦しているロシアの働きかけがあった」と報じた。
ロシア産原油の海上輸出に大きな障害が生じているのはたしかだ。
ブルームバーグによれば、ロシア港湾からの11月2日までの4週間平均出荷量は日量358万バレルとなり、10月26日までの4週間(改定値)から約19万バレル減少した。週ベースの落ち込み幅は昨年1月以来の大きさだ。中国やインド、トルコの石油企業が制裁対象となった海上輸送原油の購入を停止し始めたことが主な要因だ。
ウクライナのドローン(無人機)攻撃もロシア産原油にとって足かせとなっている。ロイターは11月2日「ウクライナのドローンがロシアの主要な黒海沿岸の石油輸出港の1つを攻撃し、少なくとも石油輸送船1隻が損傷した」と報じた。
ロシアの窮状を踏まえ、サウジアラビアも来年第1四半期の増産停止に合意したというわけだ。有志国の次回会合は11月30日に開かれる予定だ。
OPECプラスの増産停止は原油価格を押し上げたが、市場では原油市場の供給過剰懸念が根強く残っている。