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(小林偉:放送作家・大学教授)

増え続ける警察組織の設定細分化

 ドラマの主人公の職業というと、皆さんはどんな仕事を思い浮かべますか? 医者? 弁護士?

 以前、筆者が過去20年ほどの連続ドラマ主人公の職業を調べたところ、断トツに多かったのが、そう、警察官。何と全作品中の30%前後に達していました。非日常的な出来事が頻発し、犯人や事件の謎を追い詰める過程は、ドラマの題材としてうってつけですから、過去20年どころか、60年ほど遡っても“警察ドラマ”は多数確認。現在でも、2025年10月スタートの21時~23時のゴールデン・プライム帯の連ドラ18作中5作の主演俳優が警察官を演じていましたからね。

 これだけ多くの“警察ドラマ”が産み出される中で、当然の如く制作者は少しでもこれまでとは違う設定を模索します。その中で近年の傾向といえるのが、主人公が所属する警察の部署の細分化。ここ1~2年の作品から幾つか例を挙げてみましょう。

●『絶対零度~情報犯罪緊急捜査』(フジテレビ系)⇒警視庁刑事部捜査一課情報犯罪特命捜査対策室、通称DICT (Digital Information Crime Taskforce)

●『新東京水上警察』(フジテレビ系)⇒警視庁・東京水上警察署刑事防犯課強行犯係

●『緊急取調室』(テレビ朝日系)⇒警視庁刑事部捜査一課緊急事案対応取調班

●『コーチ』(テレビ東京系)⇒警視庁警務部人事二課

●『相棒』(テレビ朝日系)⇒警察庁長官官房付特命係警視庁預かり

●『放送局占拠』(日本テレビ系)⇒警視庁刑事部立てこもり犯罪対策班、通称BCCT(Barricaded Crime Countermeasures Team)

●『大追跡』(テレビ朝日系)⇒警視庁刑事部捜査支援分析センター、通称SSBC(Sousa Sien Bunseki Center)

●『スティンガース』(フジテレビ系)⇒警視庁刑事部囮捜査検証室

●『特捜9』(テレビ朝日系)⇒警視庁刑事部捜査一課特別捜査班9係

●『秘密~THE TOP SECRET』(フジテレビ系)⇒科学警察研究所・法医第九研究室

●『オクラ』(フジテレビ系)⇒警視庁刑事部捜査一課特命捜査情報管理室

●『全領域異常解決室』(フジテレビ系)⇒警視庁刑事部全領域異常解決室

●『GO HOME』(日本テレビ系)⇒警視庁生活安全部人身安全対策課身元不明人相談室

 ・・・というような具合。上記の中で実在するのは、『コーチ』の警視庁警務部人事二課と、『大追跡』の警視庁刑事部捜査支援分析センター(こちらは防犯カメラの画像解析や電子機器の解析、犯罪プロファイリングなどを通じて、警視庁内のあらゆる事件捜査を支援する部署で2009年に新設されたそうです)、そして『GO HOME』の警視庁生活安全部人身安全対策課身元不明人相談室の3部署だけ。ちなみに東京水上警察署は1879年(明治12年)に水上警察署として創設、1954年に東京水上警察署に改称された歴史ある実在の警察署でしたが、2008年に廃止。現在は東京湾岸警察署・水上安全課として存在していますが、ドラマではそれが新東京水上警察として復活するという設定です。