自民党の高市総裁(右)と日本維新の会の吉村代表(左)(写真:ロイター/アフロ)
開会中の臨時国会で、衆院議員の定数削減が実現する見通しとなってきました。与党自民党と閣外協力の日本維新の会は、すでに定数の1割削減を目指す政策合意書を締結済み。野党の国民民主党も削減案が提出されたら賛成すると表明しています。高市早苗政権の発足前まで、政治改革の一番の課題は「企業団体献金の禁止」をどう扱うかでした。自民党の裏金問題を後景に追いやるかのように浮上してきた議員定数削減とは、どんな中身なのでしょうか。やさしく解説します。
なぜ今、衆院議員定数削減が急浮上したのか
衆院議員の定数削減が急浮上したのは、次期首相の選出をめぐって各党間の激しい駆け引きが続いていた10月中旬のことです。公明党が「自公」連立政権から離脱し、自民党だけでは次期政権をつくることができない情勢になった際、自民党の新たな連立相手として浮上した日本維新の会(維新)が「定数削減」の成立を再優先するよう持ち掛けたのです。
維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は、自民党に政策合意を迫った際、大阪の副首都構想、社会保障改革、衆院議員定数の1割削減の3つを「絶対条件」として提示しました。10月17日に出演した民放の報道番組では「大幅な議員定数削減を自民党が『本気でやる』と言えるかどうか。ここが改革のセンターピンだ」と強調。12月17日までの臨時国会で関連法を早期に成立させるよう訴えました。
ことし7月の参院選で自民党が敗北したのは「政治とカネ」に対する有権者の厳しい目線があったからです。とくに、自民党の有力議員らが派閥の政治資金パーティーを利用して巨額の裏金をつくっていた問題は、完全に決着したとは言えない状態が続いています。「裏金議員」の復権問題などもあり、自民党の自浄能力には疑問符が付いたままでした。そこに飛び込んできたのが、「政治改革の1丁目1番地」(吉村代表)という議員定数の削減だったのです。
自民・維新の両党は10月20日に交わした合意書のなかで、「1割を目標に衆院議員定数を削減するため、25年臨時国会において議員立法案を提出し、成立を目指す」と明記しました。さらに国民民主党の玉木雄一郎代表も、同党が賛成すれば関連法案は成立するとの見解を表明し、「協力するから(臨時国会)冒頭で処理しよう」と発言しています。
ところが、各メディアの報道によると、自民と維新による初回の政策協議で絶対条件とされていたのは、副首都構想と社会保障改革の2つだけ。定数削減は突然、両党の間で浮上したとされています。この間の事情について、朝日新聞は「維新幹部は『献金禁止は厳しいから』とし、論点を『献金禁止』から『定数削減』にずらす思惑もあると打ち明ける」と報じました(2025年10月18日朝刊)。
政治献金問題を棚上げした形で一気に進み始めた議員定数の削減については、多くの異論も出ています。「これまでの議論を無視する乱暴なやり方」(立憲民主党の野田佳彦代表)といった野党側の批判だけでなく、自民党内にも批判は少なくありません。選挙制度に関する政策を束ねる逢沢一郎・自民党選挙制度調査会長は「いきなりの定数削減は論外だ」と強い拒否感を示しました。衆院では、議員定数や選挙区割りに関する与野党協議が継続しており、これを無視した決定は民主主義のプロセスに反するとの見解を示したのです。
