背景に計算資源の争奪戦
この動きは、AI開発競争の舞台が、計算資源の確保という総力戦に移っていることを浮き彫りにした。アルトマンCEOはかねて「計算能力の確保が最も困難だ」と語っており、この数カ月、矢継ぎ早に手を打ってきた。
9月下旬には、エヌビディアから最大1000億ドル(約15兆円)の投資を受け、10ギガワット規模の計算基盤を整備する計画を発表。
これに先立ち、ソフトバンクグループや米オラクルとは、総額5000億ドル(約75兆円)規模の巨大AIインフラ計画「スターゲート」を推進している。
オラクルとは単独で、今後5年で3000億ドル(約45兆円)規模のクラウド契約も結んだ。
今回AMDと結んだ6ギガワットと合わせると、オープンAIが関与を表明した計算基盤の規模は20ギガワットを優に超える。
これは、特定のパートナーへの依存を避け、あらゆる手段を講じて次世代AI「AI超知能(AI Superintelligence)」の実現に必要なインフラを確保しようとする強い意志の表れだ。
「循環取引」にAIバブルの懸念も
しかし、この熱狂の陰で市場の懸念もくすぶる。
特に、エヌビディアとの提携に代表される、供給元が顧客に投資し、その資金が製品購入費として還流する「循環取引」の構造を危ぶむ声は根強い。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、こうした取引がAIインフラへの過剰投資を招き、「AIバブル」を形成するリスクを指摘している。
オープンAIは依然として赤字経営が続いている。公表されているだけで総額1兆ドル(約150兆円)を超える投資計画の資金を同社がどう賄うのか、その具体策は不透明なままだ。
この天文学的ともいえる投資規模で整備されるインフラは、数百万世帯分に匹敵する莫大な電力も消費する。
持続可能な資金調達モデルの構築と、エネルギー問題への対応は、AIの未来を左右する大きな課題としてのしかかる。
オープンAIとAMDの提携は、AI半導体市場の競争を促す可能性がある一方、AI開発を主導する企業と半導体メーカーが相互に依存し合う新たな経済圏の誕生を印象付けた。
技術開発競争は、それを支える供給網と金融の巧みな設計が問われる、より複雑な段階へと突入したようだ。