イタリアのトリノで講演するジェフ・ベゾス氏(10月3日、写真:ロイター/アフロ)
米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が10月初旬、現在のAIへの投資ブームを、社会に有益な遺産を残す「良い産業バブル」であるとの見解を表明した。
多くの投資が失敗に終わるリスクを認めつつも、その過程で生まれる技術革新が長期的に巨大な恩恵をもたらすと強調。
過熱する市場への警鐘と、未来への積極投資を同時に語るテクノロジー業界の潮流を改めて印象付けた。
産業バブルと金融バブルの分岐点
英フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ベゾス氏はイタリアで開かれた技術カンファレンスで、現在のAIブームを2008年の金融危機につながった「銀行バブル」と明確に区別した。
金融バブルが社会に損失しかもたらさない「悪いバブル」であるのに対し、AIブームは産業の発展を促す「良いバブル」だと位置付けた。
同氏はその論拠として、2000年前後のドットコムバブルを挙げた。
当時は多くの企業が淘汰されたが、その過程で敷設された光ファイバー網などのインフラが、その後のインターネット社会の礎となった。
同様に、1990年代のバイオテクノロジーブームでも、多くの企業が倒産する一方で「命を救う薬」が生まれたと指摘。
「混乱が収まったとき、社会はそれらの発明から恩恵を受ける。AIでも同じことが起きる」と述べ、技術そのものが持つ価値を強調した。
ベゾス氏は、現在の市場が「良いアイデアも悪いアイデアも区別なく資金が流れ込む」興奮状態にあることを認めている。
ごく少人数のスタートアップ企業が巨額の資金を調達する現状を「異常な行動」としながらも、「AIは本物であり、あらゆる産業を変える」と断言。
短期的な市場の混乱と、長期的な技術の社会実装を切り分けて捉えるべきとの考えを示した。