米上院の商業委員会で答弁するAMDのリサ・スー会長兼CEO、手前はオープンAIのサム・アルトマンCEO(5月8日、写真:AP/アフロ)
対話AI「Chat(チャット)GPT」を開発する米オープンAIが10月上旬、半導体大手の米アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)との大規模な戦略的提携を発表した。
AI開発に不可欠な半導体の供給で独占的な地位を築く米エヌビディア(NVIDIA)への一極集中を避け、供給網の多角化を狙う動きだ。
顧客であるオープンAIが供給元のAMDに実質的に出資する異例の枠組みは、AIの覇権争いが、計算資源(コンピュート)の確保を巡る資本ゲームの様相を呈してきたことを示している。
第2の供給元を「育成」、異例の資本提携
提携の核心は、オープンAIが今後複数年にわたり、総電力容量6ギガ(ギガは10億)ワットのAMD製GPU(画像処理半導体)を購入するという大規模契約だ。
この電力容量は、シンガポール一国の平均的な電力需要に匹敵する規模となる。契約の第1弾として、2026年後半にAMDの次世代半導体「Instinct MI450」を1ギガワット分導入する。
今回の提携で特に注目されるのは、オープンAIがAMDの株式を最大で約10%取得できる新株予約権(ワラント)を得る点だ。
半導体の導入規模やAMDの株価が一定の目標を達成するのに連動して権利が確定する。
これにより両社は単なる売買関係を超え、AMDの企業価値向上がオープンAIの利益にもつながる運命共同体となる。
オープンAIが自らの安定供給を確保するため、AMDをエヌビディアに次ぐ「第2の柱」として能動的に育成する戦略が透ける。
AMDのリサ・スー会長兼CEO(最高経営責任者)が「両社にとって真のウィンウィンだ」と語るように、この契約はAMDにとって、エヌビディアが支配するAI半導体市場における事業拡大の足がかりとなる。
一方、オープンAIのサム・アルトマンCEOは「AIの潜在能力を最大限に引き出すために必要な計算能力を構築する上で、大きな一歩だ」と述べ、計算資源確保の重要性を改めて強調した。