社協が勝手に定期預金証書を…
通帳の預かりサービス契約などをめぐる武田和子さんと社協の交渉。そこに、今回の「連れ去り事件」の原因があるのではないか、と娘の後藤真由美さんらは考えている。真由美さんが言う。
「母は自立心が強い人で通帳預かりサービスは使いたくなかったのですが、社協の職員に強く勧められ、契約してしまったと話していました。しかし、社協側の金銭の管理がずさんで、今年2月に母と一緒に社協に行って、サービスの解約をお願いしたんです」
サービス締結時の契約書には、本人の申し出があれば「いつでも、この契約を解除することができます」と明記されていた。ところが、社協の事務所で対応した前述のAさんは、契約の解除に強い抵抗を示したという。
3月5日には、和子さんが直子さんに連れられて社協の事務所を訪問して「通帳を返してもらえませんか」と申し出たにもかかわらず、「(和子さんの)判断能力が低下している」として、通帳の返却を拒否された。
事態が大きく動いたのは、3月7日である。
この日は、和子さんは娘らと一緒にまたも社協の事務所に足を運び、契約の解除を申し出た。この時には和子さんが「証書がなくなっている」と繰り返し口にしたことで、信じられないことがわかった。
どういうことなのか。直子さんが話す。
「おばあちゃんが『証書』と言うので、私は最初、年金証書のことなのかなと思ったんです。それで、社協のAさんに『何かの証書も預かっているんですか?』と何度も尋ねました。すると、おばあちゃんの定期預金の証書が社協の事務所にあったことがわかったんです。そんな契約はしていない、とおばあちゃんは言っていました。実際、社協との契約書には、定期預金の証書を預かっていることなど、どこにも書かれていませんでした」
この時の様子は今でも忘れられないという。
追及されたAさんは、渋い顔をしながら定期証書の束を取り出してきて、3人に見せた。契約書にない書類が大量に出てきたことに、同席したAさんの上司も驚いていたという。その結果、社協も契約の解除を認めざるを得なくなった。印鑑を持ってなかった和子さんは拇印を押して、解約のサインをした。
ところがこの直後、予想もしていないことが和子さんの身に起きたのである。
(つづく)
12/8からYouTubeで新番組「ニュースの現場」を配信予定です。初回はジャーナリストの西岡千史さんが「高齢者連れ去り事件」の真相に迫ります。連れ去られた武田和子さんのお孫さんも証言します。ぜひチャンネル登録をお願いいたします。
◎「高齢者の連れ去り事件」の連載は、調査報道グループ「フロントラインプレス」がスローニュース上で発表した記事を再構成し、その後の情報を付け加えるなどしてまとめたものです。事案の詳細はスローニュースで読むことができます。
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