「カギを開けるように」…室内で怯える97歳女性
東京都江東区内の都営アパートに住んでいた武田和子さんは「今年はみんなで花見に行きたいね」と話していたという。今年春先のことだ。ところが、そんなささやかな望みを断ち切るかのように「事件」は起きた。
3月13日、和子さんのアパートの自宅玄関前に、黒い服を着た男女が複数人やってきた。
アパートは鉄骨鉄筋コンクリート造の建物で、400戸以上の住戸がある。築半世紀以上。老朽化は進み、廊下は昼間でも薄暗い。そこに何人もの人が集まってきた。
目撃した近所の住民は「廊下にいた人たちは警察官を名乗っていました」と言う。その証言によると、彼らは和子さんの自宅内の様子を知りたがり、近隣の住宅のベランダから中の様子を見たがっていた。しかし、このアパートにはベランダがない。そのため、彼らは別の方法で家の中を確認できないかを探っていたようだ。
実はこのとき、家の中には和子さんだけでなく、ほかに2人がいた。1人は和子さんの娘で、近隣の県に住む後藤真由美さん(仮名)。もう1人は真由美さんの娘・後藤直子さん(仮名)だ。3人は突然やってきた集団に驚き、家の中で怯えていたという。
カギを破壊して自宅に侵入する警察官たち=後藤直子さん(仮名)撮影の動画から
娘の真由美さんはこう振り返る。
「この日の午前、江東区役所から母の安否をたずねる電話がかかってきました。『元気にしています』と答えたのですが、午後1時ごろになって黒い服を着た人がやってきたんです。警察官だと言って、玄関のチャイムを鳴らし『カギを開けるように』と言われました」
3人は、何が起きているのか全く理解できない。本当に警察官なのか。犯罪者のグループじゃないのか。和子さんも怖がり、「玄関のカギを開けないで」と強く言う。
「外の黒い服の人には『母は元気です』とだけ告げ、カギを開けないようにしていました」
すると、警察官を名乗る人々は、工具を使ってカギを壊し、内部に侵入してきたのである。家宅捜索令状の提示もない。怯え、あっけに取られているうち、彼らは土足で居室に上がってきた。