「AIエージェント」が注目を集めています。AIエージェントは自律的に動き様々なタスクを実行してくれる一方で、その便利さの裏には誤作動や悪用のリスク、責任の所在といった新たな課題も潜んでいます。経営コンサルタント・小林啓倫氏に、AIエージェントの現在地と今後必要となるルール整備について聞きました。3回に分けてお届けします。
※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」の内容の一部を再構成したものです。番組ではAIエージェントを実際に操作しながら、その仕組みなどをわかりやすく解説しています。詳しくはYouTubeでご覧ください。
サービスごとの機能差はあまりない
——現在はOpenAIが提供しているChatGPTの「エージェントモード」などがAIエージェントの代表例かと思いますが、他にはGoogleのGeminiなどもあります。各社の生成AIの特徴や使い勝手、アウトプットに違いはあるのでしょうか。
小林啓倫・経営コンサルタント(以下、敬称略):正直なところ、現時点ではそれぞれのAIエージェントには大きな機能差はないという印象です。AIエージェントが自律的に動くうえで重要となる「計画の立案」や「タスクの実行」といった部分にも、目立った差はありません。あるエージェントが新しい機能を実装すれば、他のエージェントもすぐ追随して似た機能を搭載するといった状況です。
また、セキュリティ上の理由から、現状AIエージェントが実行できること自体それほど多くありません。例えば、航空券の購入やホテルの予約などを完全にAIに任せきれるわけではないのです。そうした点も踏まえて、人間がエージェントに任せたい作業と、人間が行った方がよい作業を整理して考えると、結局どのAIエージェントを使っても現段階でできることや得られる結果に大きな差は出ないだろうと思います。
とはいえ、例えばスライド作成の分野では、中国のAIエージェントサービス「Manus(マヌス)」が優れていると言われています。エクセル操作やデータ分析が得意なエージェントがあるなど、ツールによって多少の得意分野の違いは見られます。
ただし、ChatGPTやマイクロソフトの「Copilot(コパイロット)」でも、事前に細かく指示を与えればこちらの狙いに沿ったものを作成できると思います。結局のところ、どれだけ丁寧に指示を出すかというユーザー側の工夫次第で、アウトプットの質も変わってくるでしょう。