離農者急増の今の局面は「新規就農者のチャンス」
中森:どんな目的で農業に取り組むかによるのだと思います。私たちは「日本の食料安全保障を守る」という大きなビジョンの下で経営していますから規模の拡大は避けて通れない道でした。
対照的に「家族で1000万円くらい稼げたらいいかな」と考えている新規就農者は、私たちほど農地を集める必要はないと思います。今年から離農者が急速に増えていきますから、20〜30ヘクタールほどの農地を確保することは可能だと思います。やりたい人は、やってみるべきですね。
中森剛志(なかもり・つよし) 中森農産代表取締役 東京農業大学農学部卒業。農業研修を経て、2017年に「食料安全保障の確立」を企業理念として中森農産(株)を設立し、コメ、ムギ、ダイズ、ソバを生産。埼玉県・栃木県・島根県・山口県にて生産を行い、作付面積は合計330ヘクタールにのぼる。一方で、国のセーフティーネットも手厚くする必要があります。専業コメ農家になろうと思ったら、最低3000万円の資金は必要だと思っておいた方がいいです。大規模農家なら1億円くらいは必要でしょうか。
今は米価が上がっていますから経営リスクは少ないのですが、過去30年でみると米価が大暴落する局面で、一気に新規就農者が離れていきます。米価の変動に耐えられるくらいの所得補償が必要ですし、農家の方も、考えに考えて、初期投資はできるだけ抑えたほうが賢明だと思います。
──中森農産は、独自にソフトウエアを開発し、生産計画の策定や現場作業を合理化しています。