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現在、ビジネス界で「マーケティングDX」という言葉を聞かない日はありません。デジタル技術とデータを駆使し、顧客体験(CX)を刷新し、ビジネスモデルそのものを変革する。この挑戦は、あらゆる企業にとっての生存戦略となっています。その中核を担う武器が「ビッグデータ」です。
しかし、現場の実態はどうでしょうか。「膨大な予算を投じてデータ基盤を整えたが、肝心の利益につながっていない」「分析レポートは増えたが、現場の意思決定は以前より鈍くなっている」といった悩みを抱える企業は、決して少なくありません。
この問題の主な原因として、よく「データの分断(サイロ化)」が挙げられます。「部署を越えてデータを統合すれば解決する」という意見も一般的ですが、果たして本当にそれだけが解決するのでしょうか。本稿では、DXの裏側に潜む4つの「パラドックス(逆説)」―—IT投資、データ活用、顧客志向、組織連携といった一見正しい取り組みが、なぜマーケティングDXを停滞させてしまうのかを明らかにしていきます。
パラドックス1:IT投資の皮肉
ビッグデータは、量(Volume)、多様性(Variety)、速度(Velocity)の「3V」という特徴を持ちます。これらを味方に付ければ、経験や勘に頼らない「データドリブン」な経営が可能になり、全てが効率化されるはずでした。しかし、ここで私たちは「ITパラドックス」という、一見矛盾した現象に直面します。
・なぜ投資は「空振り」に終わるのか
ITパラドックスとは、「ITに多額の投資をしたのに、期待したほど生産性が上がらない」という矛盾のことです。ITパラドックスの発生について、米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローンスクールで教授を務めたエリック・ブリニョルフソンは、今の時代にも通じる4つの要因を教えてくれています(1992)。






