自民党の高市早苗総裁(右)と会談し、連立政権からの離脱を伝えた公明党の斉藤鉄夫代表(写真:共同通信社)
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 自民党にどこまでもついていく「下駄の雪」と揶揄されてきた公明党が連立政権を離脱した。閣外協力もしない。今後は野党として、国会対策委員長会談などの代表者協議にも出席する方針だという。激震が走った公明の離脱の背景と今後の政界の行く末は──。「日刊ゲンダイ」第一編集局長の小塚かおる氏がレポートする。

覚悟を決めた公明党「連立離脱」の経緯

「今回は本気だ」

 公明党・創価学会の内情に詳しい関係者からそんな連絡をもらったのは10月7日のことだった。

 4日に投開票が行われた自民党総裁選で、高市早苗氏が小泉進次郎氏優勢の下馬評を覆して勝利し、公明党本部に就任挨拶に出向いたものの、祝福ムードにはほど遠く、その場で連立維持において「政治とカネの問題」「靖国参拝を巡る歴史認識」「外国人との共生」という3つの懸念を伝えられていた。

 しかし、7日に発足した自民の新執行部には、高市総裁に思想信条が近いタカ派議員が顔を揃え、旧安倍派幹部の萩生田光一氏が幹事長代行に起用された。萩生田氏は裏金議員の筆頭格であり、裏金事件への関与で当時の政策秘書が略式起訴され、有罪になっている。

自民党の萩生田光一幹事長代行(奥は高市総裁、写真:共同通信社)

 さらに公明党が絶対に許せない黒幕が表に出てきた。この人事を仕切った、高市氏当選の流れを作った立役者の麻生太郎氏だ。

 本人は副総裁に就任し、麻生派が執行部に3人。実は麻生氏はかつて、安全保障政策を巡り「公明党がガンだ」と発言。以来公明党にとって「天敵」(前出関係者)なのだ。そんな人事を見て、公明が「懸念」を無視されたと受け止めたのは想像に難くない。冒頭の「本気だ」発言は、新執行部発表の直後だった。

2025年10月7日、自民党の新執行部が発足し、写真撮影を終えた高市総裁(手前)と麻生太郎副総裁(写真:共同通信社)

 それでも、「まさか連立離脱まではないだろう」と思いながら関係各所に取材を進めたのだが、9日昼すぎに旧知の公明幹部を電話で捕まえることができた。話の中身は決定的だった。

「昨日電話をもらってたみたいで。昨日は出られずに申し訳ない。電話の理由は分かってたけど……」

 私は聞いた。連立離脱は本当にあるのか。しばらく沈黙のあと……。

「3つ示した懸念は自民党へのブラフといったレベルではない。かなり覚悟をもって対峙している」

 さらに続けた。

「『自公の関係は地に落ちた』など、これまでもギクシャクすることはあったが、その時は連立離脱までの話は出ていない」

「自民党はわれわれが折れるだろうと思っているが、どうして振り上げたこぶしを下ろせると思うのか不思議だ」

「早めに結論が出るかもしれない」

 結局、その日の中央幹事会と全国県代表協議会を経て、翌10日、公明の斉藤鉄夫代表は「持ち帰って協議したい」と渋る高市総裁の慰留を振り切って決別を伝えた。

自民党の高市総裁との会談後、記者会見する公明党の斉藤代表(2025年10月10日、写真:共同通信社)