2025年9月30日、ガザでイスラエルによる攻撃が続く中、ヌセイラト地区で慈善団体から温かい食事を受け取るために長蛇の列で待つパレスチナ人(写真:Omar Ashtawy/APA Images via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
2025年10月7日、パレスチナ自治区ガザを実行していたイスラム過激派組織ハマスがイスラエルへの大規模テロ事件を実行してから2年が経過した。その翌日の8日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、アメリカが提案したガザをめぐる和平案の第1段階に、イスラエルとハマスの両者が合意したと発表、10日にはイスラエルが、ガザでの停戦とイスラエル人の人質解放に関する和平案の「第1段階」の枠組みを承認したと発表した。ガザに平穏は訪れるのか。今後の動向に世界の目が集まっている。
筆者はハマスによるテロから2周年の直前のタイミングで日本を訪問していたイスラエルの経済産業大臣ニル・バルカット氏に単独インタビューすることができた。同氏がエルサレム市長時代に面会したことがある、以来7年ぶりの再会だった。
近い将来の首相候補とも目されるバルカット大臣に、日本とイスラエルの関係、中東和平問題、イランとの関係まで、話を聞いた。(聞き手:山田 敏弘)
「隣人に常に挑まれているわれわれは、いかなる戦争にも勝たなければならない宿命」
――前回大臣が来日したのは2年前ですね。
ニル・バルカット経済産業大臣(以下、バルカット) 実は2年前に日本政府とビジネスの協議をするために来日していました。来日中、(イスラム過激派組織)ハマスがイスラエルを襲ったのです。10月7日の土曜日の正午ごろ、日本にいる私に携帯電話を通じてイスラエルでの事件が知らされました。すぐに空港に行き、最初の便で帰国しました。
――それ以前にも何度か日本に来たことがあると聞いています。
バルカット 私は起業家で、世界中で多くのビジネスを行い、仕事でもプライベートでも日本に何度も来ています。日本が大好きですね。
イスラエルのニル・バルカット経済産業大臣(写真:DPA/共同通信イメージズ)
日本とイスラエルは多くの共通点を持っていて、お互いに敬意を払っています。非常に異なる部分がありますが、そこが興味深い点です。イスラエルの若者の多くは、軍隊を終えると世界中を回り、その多くが精神的なものを吸収するために日本に来ます。私たちは日本を愛しているのです。
――今回の訪問の主な目的は?
バルカット アジアはイスラエルの成長にとって主要な地域だと見ています。そして、私たちが得意とするのはイノベーション。そして、日本は産業分野が優れているので、私たちはその二つを結びつけ、共に拡大し、広げていきたいと考えています。私たちが持つ起業家精神とイノベーション、そして1万社のスタートアップ企業を、日本の重工業と能力と結びつける時に「1 + 1 = 3」となります。
――イスラエルはイノベーションの分野において世界で最も進んでいる国の一つですね。
バルカット まず、私たちが試練に直面していることです。残念ながら、私たちは厳しい環境の地域に住んでいます。そして、隣人たちが私たちに挑戦してきます。ですから、私たちは自衛し、いかなる戦争にも負けないように、非常に創造的に考えなければならない。イスラエル人起業家のDNAは、「勝たなければならない」というものです。
それは軍隊で始まります。イスラエルには徴兵制があります。私はレバノン戦争で空挺部隊の中隊長でした。戦いに行けば「勝たなければならない」と理解できる。私たちに選択肢はありません。
そして、そのDNAは軍事的なものだけではありません。ビジネス面にもあります。私たちが素晴らしい新しいアイデア、革新的なアイデアを開発した時、必ず成功させなければならないと明確に理解しています。企業は成功に貪欲です。それが第一点目です。
そして、私たちはわずか1000万人しかいない非常に小さい国です。成功するためには、最初からグローバルに目を向けなければなりません。それゆえに、私たちは世界中でそうした関係とパートナーシップを築き、拡大し、より多くの顧客にリーチしようとしています。国内市場だけで成功することはできないからです。
つまり、私たちが小さい国であるという事実は、世界中を回る多くのイスラエル人にとって「利点」となっているのです。その観点から、日本市場を潜在的な顧客としてだけでなく、実際に製品を共に開発する潜在的なパートナーとして見ることは、それが成功への道だと私たちが理解しているからに他なりません。