ゴールドカード発行の大統領令に署名するトランプ大統領(9月19日、写真:ロイター/アフロ)
トランプ米大統領が9月下旬、高度技能を持つ外国人向けの就労ビザ「H-1B」に10万ドル(約1500万円)という高額な手数料を課す大統領令に署名してから約3週間が経過した。
当初「年額」とされた手数料は、後にホワイトハウスが「申請時の一度限り」と訂正するなど情報が錯綜した。
それでも、この急進的な改革は、米国の技術覇権を支えてきたグローバルな人材の流れを大きく変え、特にIT業界に事業モデルの根本的な見直しを迫っている。
制度の狙いは「米国人雇用」と歳入増
今回の新制度の柱は2つある。
一つは、米ハイテク企業などが世界中から優秀な人材を確保するために活用してきたH-1Bビザの新規申請に対し、10万ドルの手数料を義務付けたことだ。
政権側は、一部企業がこの制度を米国人労働者の雇用を回避する手段として利用してきたと問題視しており、「企業が確実に米国人を雇用するように促す」ことが主目的だと説明する。
もう一つの柱が、100万ドル(約1億5000万円)を米国財務省に支払うことで個人の居住権を認める「ゴールドカード」の導入である。
企業が従業員を後援(スポンサー)する場合は200万ドルが必要となる。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところでは、トランプ大統領は、これらの施策によって「数千億ドルの歳入がもたらされ、それを減税や債務削減に充てる」と述べており、国家財政への貢献も大きな狙いとなっている。
この改革に伴い、これまで年14万件だった雇用ベースのビザ発給枠は8万件に縮小される。
政権が目指すのは、移民の数を絞り込み、米国に多大な経済的貢献をする者に門戸を開くという、明確な選別思想に基づいた新たな移民制度の構築と見て取れる。