「平和賞」の歴史

 ノーベル平和賞はノーベルの遺言に沿って、「諸国民の友好のため、常備軍の廃止または縮小のため、そして平和会議の開催や推進のため、最も大きな、または最良の働きをした人物」に与えられる賞としてスタートしました。

 1901年の第1回受賞者は2人。1人は国際赤十字社の創設とジュネーブ条約(戦時傷病者の保護等に関する条約)の制定に貢献したアンリ・デュナン氏(スイス)。もう1人は、多国間の国際組織としては最も歴史の古い列国同盟会議の創設を主導したフレデリック・パシー氏(フランス)でした。

 1919年には、国際連盟の創設に多大な貢献を果たしたウィルソン米大統領が受賞。第1次世界大戦の惨禍を繰り返さないための国際組織をつくり上げたことが評価されました。

 第2次世界大戦が終結した直後の1945年に受賞したのは、国際連合憲章を起草し「国連の父」と呼ばれた米国の政治家コーデル・ハル氏。1964年には黒人差別を終わらせるために非暴力抵抗運動を主導したキング牧師(米国)、1979年には献身的な医療活動で知られるマザー・テレサさん(インド)が選ばれています。

 ノーベル賞の他の各賞と違い、平和賞では団体・組織も授賞の対象となります。実際、これまでに以下のような団体が選ばれてきました。

◎赤十字国際委員会(1944、1963年ほか)
◎国連難民高等弁務官事務所(UNHCR、1954年)
◎国連児童基金(UNICEF、1965年)
◎核戦争防止国際医師会議(1985年)
◎地雷禁止国際キャンペーン(1997年)
◎国境なき医師団(1999年)
◎核兵器廃絶国際キャンペーン(2017年)

 2024年には日本被爆者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞しました。核兵器による唯一の被爆国・日本。その実相を肉声で語ることのできる被爆者は高齢化し、受賞は遅すぎたとの声も出ましたが、受賞によって原子爆弾がもたらす惨禍が改めて世界で再認識されることとなりました。

 1901年の第1回から数えると、受賞者は139人・団体(男性92人、女性19人、団体28)に達しています。