三谷幸喜 写真/共同通信社
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(小林偉:放送作家・大学教授)

21世紀に入って初の“三谷・民放プライムドラマ”

 いきなりの身内贔屓で恐縮なのですが、近年、筆者の母校であり、現在の勤務先でもある日本大学芸術学部出身の、ドラマ脚本家たちの活躍には目覚ましいものがあるように思います。

 先日好評のうちに幕を閉じた朝ドラ『あんぱん』を手掛けた中園ミホ、来年、『教場Ⅲ』、『踊る大捜査線NEW』という、ドラマから派生した2本の映画話題作を送り出そうとしている君塚良一、来年1月スタートのNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』の八津弘幸、さらに昨年の朝ドラ『虎に翼』の吉田恵里香、朝ドラ『マッサン』や、映画化もされた『トリリオンゲーム』(TBS系)などの羽原大介、そして今や日本を代表する脚本家と呼んでも過言ではないであろう、三谷幸喜、宮藤官九郎などなど・・・同じキャンパスに通った者として、また、いちドラマファンとしても、非常に誇らしく感じています。

 そんな、我が母校が生んだ人気脚本家の一人=三谷幸喜が、実に22年ぶりに民放連続ドラマの脚本を手掛け、話題となっているのが10月1日にスタートしたフジテレビ系『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』です。

 22年前に手掛けた作品は何だろうと調べたところ、2002年10月から翌年3月にかけて放送されたフジテレビ系の香取慎吾主演『HR』。この作品は23時スタートという、分類的には“深夜ドラマ”でしたから、プライムタイム(19時~23時)の連ドラとしては、2000年放送の役所広司主演『合い言葉は勇気』(フジテレビ系)以来。ということは21世紀に入って初の“三谷・民放プライムドラマ”ということになります。

 ちなみに彼がこれまでに、フジテレビ系以外の地上波民放局向けへ執筆した連ドラは、1996年放送の浜田雅功主演『竜馬におまかせ!』(日本テレビ系)のみですね。

 勿論、その間に連ドラを書いていなかったワケではなく、1年通じての放送となるNHK大河ドラマを、2004年の『新選組!』、2016年の『真田丸』、2022年の『鎌倉殿の13人』と3回にわたって担当。これは最多となる中島丈博に続く2位タイ(他に、田向正健、ジェームス三木、橋田壽賀子、市川森一)に相当します。これはやはり当代一のドラマ脚本家と言われる証左でしょう。