クドカンっぽい?

 さて、そんな三谷幸喜の新作ドラマですが・・・初回放送後のSNSなどでの反応はあまり芳しいものではなかったようです。

〈ごちゃごちゃしていて、何を伝えたいのか、話に最初からついていけない。開始10分で脱落〉〈役者使い過ぎ。三谷幸喜の自慢大会?〉〈有名どころとクセ強役者をこれでもかと揃えて、オールスターものみたいなゴチャゴチャドラマをやるの、マジで三谷幸喜の悪い癖〉などという具合。中には〈後輩のクドカンっぽくない?〉なんてコメントもありました。

 今回の『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』は、放送前からそのキャスティングが話題となっていました。菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、小池栄子、市原隼人、小林薫などと、いずれも主演級の役者がズラっと顔を揃えている上、野間口徹、アンミカ、戸塚純貴、秋本才加、井上順、坂東彌十郎に、菊池凛子、渡辺謙(サプライズで声の出演)という米アカデミー賞ノミネート俳優2人までもが登場という、大河ドラマ並みの豪華さです。

 初回はそんな豪華俳優陣の紹介も兼ねていたため、SNSのコメントにもあった〈オールスターものみたいな、ゴチャゴチャドラマ〉という指摘にも頷ける部分は確かにあったように思います。ただ筆者は、ポジティブに考えれば、これだけの役者が集うだけの、脚本の面白さが待ち受けているという期待値も感じた次第。

 加えて、舞台となっている1980年代を再現したセットもかなり豪華。制作費削減が急激に進んでいる昨今の民放ドラマでは破格の扱いでしょう。これも演劇畑出身の三谷幸喜が得意とする、限定された空間でのドラマ展開に大きくプラスに働くのでは・・・とも感じました。

 また〈クドカンっぽい〉という指摘は、恐らく昨年の宮藤官九郎脚本の話題作『不適切にもほどがある!』(TBS系)と同様1980年代が舞台となっていることや、昨年のもう一つのクドカンドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)にも小池栄子が出演しているということもあるでしょう。筆者もその点は少し感じたのですが、三谷幸喜が後輩とは違う世界観をどう捻り出していくのか、逆に興味津々です。

 さらに筆者が注目したいのは、この作品が「半自伝的である」と三谷自身が語っていること。小劇団の創設者(菅田将暉)という、かつての自分のような人物を主人公に据え、蜷川幸雄(演劇界の巨匠演出家。故人)などの実名も交えている点を、これからの展開でどう“回収”するのか、楽しみにしております。

 100歳まで現役を通した映画監督にして脚本家の新藤兼人が遺した「誰にでも傑作は書ける。それは自分の周囲の世界を書くことだ」という言葉通りに、三谷幸喜の新たな傑作になるのか、否か・・・いずれにしても、今秋最大の話題作であることは間違いありません。

 マァ、筆者がこの原稿を書いている時点では、初回放送が終わったばかり。大学の後輩として、いろんな意味での“期待”を込めて、観守っていきたいと思います。※文中敬称略