ベネズエラで反米感情が高まっている(写真:AP/アフロ)
(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)
米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り1バレル=62ドルから65ドルの間で推移している。ロシアからの原油供給の減少懸念が材料視される展開が続いており、価格のレンジは先週とほぼ同じ水準で推移している。
まず原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国の間で輸出や生産能力拡大の動きが出ている。
イラク国営石油販売企業SOMOは9月21日「OPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)で決定された自主減産を徐々に縮小する方針に従う形で原油輸出を増加させている」ことを明らかにした。
OPEC加盟国の中でイラクは生産枠に対する超過生産量が最も大きく、これを相殺するための減産を要求されているが、SOMOによれば、イラクの8月の原油輸出量は日量338万バレル、9月は同340万~345万バレルになるという。イラク政府はトルコ経由の原油輸出再開も決めており、10月の輸出量はさらに増加することが見込まれる。
クウェート石油省も22日「同国の原油生産能力が日量320万バレルを超えた」と発表した。クウェートの原油生産能力は2010年の日量330万バレルをピークに減少していたが、その後の増産投資が功を奏して10年ぶりの水準に回復した形だ。
OPEC第2位と第5位の産油国がこのような発表を行った背景には、OPECプラスが18~19日に加盟国の今後の生産枠について協議したことがある。
協議の結果は明らかになっていないが、増産余力がある中東産油国が生産枠の拡大を求めたことは確実だ。アラブ首長国連邦(UAE)は増産の意思を鮮明にしており、イラクやクウェートもこの動きに追随したとしてもなんらおかしくはない。
新たな生産枠は年末までに設定される予定だが、OPECプラスの協調体制が揺らぐ事態となれば、原油価格の下押し圧力がかかるのは間違いない。
足元の原油価格を下支えしているのはロシアなどの地政学リスクだ。