AI半導体の最大手、米NVIDIAのフアンCEO(写真:ロイター/アフロ)
人工知能(AI)の研究開発や活用の推進を目指す日本の「AI法」が、この9月に全面施行されました。これに伴い、政府は総理大臣を長とする「AI戦略本部」を設置。同時に、AI基本計画の策定に向けて準備を進めています。一方、AIの利活用に対しては「適切な規制を実行しなければ社会の混乱が拡大する」といった懸念も少なくありません。政府のAI推進施策とそれをめぐる動きはどうなっているのでしょうか。やさしく解説します。
出遅れ日本、「AI法」が全面施行
「AIは、経済発展や国民生活の利便性、企業の国際競争力に直結する極めて重要な分野であり、世界でAIの開発・活用の競争が激化している。ここ1~2年が本当に勝負。足踏みは決してあってはならない」
AI法の全面施行に伴い、新設の人工知能戦略担当大臣(内閣府特命担当大臣)に就任した城内実氏は9月1日の就任会見でこう述べ、さらに「米中と競争して伍していくため、(政府として)勝ち筋をしっかり設定する」と強調しました。城内氏の念頭にあるのは、日本で良質なデータが蓄積されている医療やインフラ、防災などの分野です。日本はそれらの分野でAI開発を強化し、国内外に展開していくことが「我が国の勝ち筋ではないか」と力説しました。
世界のAI熱はとどまるところを知りません。総務省の情報通信白書(2023年版)が引用している調査機関Statistaの「Artificial intelligence (AI) market size worldwide from 2020 to 2031」によると、2021年に960億ドル(約14兆円)規模だったAIの世界市場(売上高)は、2025年には4200億ドル(約62兆円)に拡大すると予測されています。
一方、IT専門調査会社のIDCの試算では、2025年時点における日本のAI市場規模は800億円足らず。単純に比較すると、世界市場の1%程度しかありません。
Statistaの予測では、今から5年後の2030年にはAIの世界市場は1兆8470億ドル(約272兆円)超の規模まで拡大する見通しです。そうしたなか、米国や中国などと比べて大きく立ち遅れた日本が、どのようにしてAI戦略を打ち立てていくのかが大きな課題となっていたのです。
