令和時代に顕著になった新しいタイプの挑戦者
これに対して、平成の終わりから令和に入って顕著に見られるようになったのが、このどちらでもない、初めからお金以外の目標をはっきりと持っている人、純粋な知的好奇心や事業意欲から起業する人が出てきたということです。
子供の頃の劣等感の裏返しでもヴェブレン的な顕示欲でもない、純粋に明るい未来を志向して起業する若者が出てきています。特に最近では、テクノロジー系の理系出身者に、こうした人たちが増えているように思います。私としては、このような資本主義の新しいプレーヤーが出てきたことに新鮮な驚きを覚えると同時に、未来への希望を感じています。
他方で、起業ではなく投資の分野において、より良い未来を見据えて投資家の道を歩んでいる若者がいるかと言われると若干微妙です。私が見てきた金融の過去の姿と大して変わっていないと思う一方で、それでも近年は、ESGやSDGsに紐づいたインパクト投資という切り口で、そうした新たな投資家たちも出てきたなと感じています。
こうしたことから見えてくるのは、現代の資本主義社会を生き抜くためのいくつかの「勝ち筋」です。
小さな失敗を何度でも繰り返す
その一つが、まずは若いうちにがむしゃらに働いて元手を作ることです。事業を始めるために借金をするという手もありますが、いずれにしても、手元に資金(資本)がなければゲームには参加できませんし、何もスタートしません。
その元手を使って事業を始める、或いは投資を始める──若い人たちにとっては、これをいかに早いタイミングで始められるかが重要になってきます。
「若い」ということの本質的な意味は、「時間がある」ということです。「時間がある」ということは、「何度も失敗をすることができる」ということです。「失敗は成功の母」という使い古された言い回しがありますが、小さい失敗をたくさん繰り返すことで私たちは経験値を高められますし、それが最終的に成功につながるのです。
人間が唯一絶対に取り戻すことができないのが「時間」です。若い時の失敗は致命傷になりませんが、歳を取ってからの失敗は致命傷になります。リカバーするための時間が足りないからです。
そして、事業や投資には複利の効果が働きます。資本主義は複利を発明することで、まだ実現していない未来をその内側に取り込むことに成功しましたが、逆に言えば、複利の力を使えば、現在の価値は将来に向かって雪だるま式に拡大していきます。
「池の蓮の葉は1日で2倍に面積を広げていきます。蓮の葉がある池の半分を覆うのに1カ月かかりました。それでは、この池が全部覆われてしまうのにあと何日かかるでしょう?」というクイズがあります。
この答えは「あと1日」なのですが、これが複利の効果です。単利と違って、複利では元本が指数関数的に拡大していくのです。