都内で開催されたスズキの「技術戦略説明会2025」の様子。ここでスズキの鈴木俊宏社長はとある覚悟を語った(写真:筆者撮影)
スズキが9月9日、「10年先を見据えた技術戦略2025」を発表した。昨年同様の戦略を公表しており、その進捗報告と新たに加える事業についての説明だ。その中で注目されたのは「軽自動車の将来」と「他メーカーとの連携」だ。鈴木俊宏社長やスズキ経営幹部らの発言を踏まえて紹介する。
(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)
エネルギー極少化に向けたスズキの挑戦
スズキの方針の軸となるのが、2月公開の中期事業計画で掲げたコーポレートスローガン「By Your Side」。目指す姿を「生活に密着したインフラモビリティ」とした。その上で、技術戦略は「エネルギー極少化」と「本質価値の最大化」の融合を目指す。
「エネルギー極少化」では、量産を視野に大きく6つの技術領域を同時並行で研究開発を進める。
順に説明すると、1つ目は、軽くて安全な車体「Sライト」。全社横断のチームをつくり、既存モデルと比較して80kgの削減にめどがつき、目標とする100kg、さらにそれ以上の軽量化が視野に入ってきた。
そもそも小型軽量な軽自動車で100kgの軽量化は高いハードルであり、昨年の計画発表時はメディアから懐疑的な見方もあった。現状での80kg減の内訳は、部品軽量化で50kg、構造進化で20kg、そして仕様の見直しで10kg。
当然のことだが、軽量でも安全性を十分に確保した上で、2030年の前までに先行モデルの開発を完了させ、軽自動車から小型車へ順次量産していく計画だ。
2つ目は、内燃機関の高効率化である。既存機構での燃焼効率向上に加えて、バイオ燃料とカーボンニュートラル燃料の対応を進める。
なかでも、スズキが圧倒的な販売台数を誇るインドでは、牛糞からバイオガスを生成するプラントを年内に稼働する。スズキが牛糞を農家から買い取ることで農村の所得向上につなげると同時に、インド政府が進めるエネルギーや有機肥料の自給自足に貢献する。インドには、約3億頭の牛がいる。