(英エコノミスト誌 2025年9月6日号)
フィンランドのストゥブ大統領(左)とデンマークのメッテ・フレデリクセン首相(中央)、右がウクライナのゼレンスキー大統領(9月3日、ゼレンスキー大統領のデンマーク訪問時に撮影、ウクライナ大統領府のサイトより)
アレクサンデル・ストゥブ大統領はウクライナがフィンランドの成功を再現できると主張している。
クレムリンの専制君主がそこはロシアの勢力圏内にあると言い、不平等な領土交換を要求した。
要求が拒まれると、偽旗作戦を仕掛け、次に侵攻した。首都を2週間で陥落させる腹積もりだった。
西側の民主主義国がロシアに対抗するための支援を約束したが、果たされなかった。
それから5年も経たないうちに、侵攻を受けた国は領土の10分の1の割譲と永世中立の約束を強いられた――。
これは2020年代のウクライナの運命ではなく、1940年代のフィンランドのそれだ。同国は今、欧州で最も成功・繁栄している国の一つになっている。
ウクライナを熱烈に支持するフィンランド大統領
このところ、フィンランドが再び注目を集めている。
ホワイトハウスで先月開かれたドナルド・トランプ大統領とウォロディミル・ゼレンスキー大統領、そして欧州の首脳6人による会合には、フィンランドのアレクサンデル・ストゥブ大統領の姿があった。
最も熱狂的かつ最も冷静沈着なウクライナ支持者の一人であるストゥブ氏は、トランプ氏に発言を促されると次のように語った。
「我々は1944年に1つの解決策を見つけた。2025年においても、ロシアの侵略戦争を終わらせ、長続きする公正な平和を見いだして手に入れるための解決策を見つけられると確信している」
本誌エコノミストが最近ヘルシンキで行ったインタビューでは、敗北と受け止める人が多い1944年の決断について「我々は今でもフィンランドが勝ったと思っている。独立を維持できたからだ」と述べていた。
1939~40年の「冬戦争」でスターリンが初めて攻撃してきた時、フィンランドは独立して21年しか経っていない国だった。
19世紀のほとんどはロシア帝国の一部とされ、その前の600年間はスウェーデンの一部とされていた。
フィンランドは中東欧をドイツとソビエト連邦で分け合うことを決めた1939年の秘密協定「モロトフ=リッベントロップ協定」に含まれていた。国はソ連側に割り振られた。
しかし、旧ロシア帝国のほかの地域とは異なり、そして中東欧のほとんどの地域とも異なり、人口が600万人に満たず、ロシアとの国境線が1300キロにも及ぶフィンランドは、独立も民主主義も失わなかった。