写真:ideyuu1244/イメージマート
(我妻 佳祐:ミニマル金融研究所代表)
みなさんは「座礁資産」という言葉を聞いたことはありますか? 英語ではstranded assetといい、それを日本語に直訳した言葉です。
市場や社会環境の変容で価値が毀損したり、大きく目減りしたりする可能性のある資産を指す。2011年に国際環境NGOの「カーボントラッカー」が発表した報告書で初めて座礁資産の概念を提唱したとされる。
引用:座礁資産とは 脱炭素など社会環境変化で価値低下も:日本経済新聞
順風満帆で航行していた船が突然浅瀬に乗り上げ身動きがとれなくなってしまうのが座礁ですが、これからも安定的に利益を生み出すはずだった資産が突然なんらかの理由でガラクタになってしまうのが座礁資産というわけです。
具体的には、石炭火力発電が典型的な「座礁資産」だとされています。
銀行は石炭火力発電が長期間にわたって利益を生み出すことを想定して電力会社に資金を融資しますが、世界的な脱炭素の枠組みが整備されてくると、CO2排出量の多い石炭火力発電は追加の設備投資が必要になって収益力が低下したり、最悪の場合は発電事業が継続できなくなったりして、文字通り、「ガラクタ」になってしまうリスクがあります。
銀行としては、電力会社向けの債権が「不良債権」となってはたまらないので、3メガバンクは既に石炭火力発電への新規融資を停止しています。環境保護団体からすればそれでも一部の例外を設けているのが不満なようですが、メガバンクといえども融資対象が座礁してしまうことは恐怖であり、大きな影響を与えています。
さて、銀行に関してはかつての不良債権問題のトラウマもあり、融資対象の品質やリスクには神経質になっているのでとりあえず大丈夫でしょう。
生命保険会社に目を向けてみると、私はここにも大きな座礁資産リスクがあるのではないかと思っています。それが、「低解約返戻金型の保険」です。社会環境や規制の変化で、“価値を失う資産”となってしまうリスクがあると考えています。

