「クリムト・アライブ」展示風景
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(ライター、構成作家:川岸 徹)

19世紀末ウィーンを代表する画家グスタフ・クリムト。彼が築き上げた「黄金の世界」を堪能するイマーシブ(没入型)展覧会「クリムト・アライブ」の世界初開催展が日本橋三井ホールで開幕した。

Grande Experiences新作のテーマは「クリムト」

 アートの新しい楽しみ方として、すっかり定着した感のある「イマーシブ(没入型)展覧会」。イマーシブ展はアート作品をベースにして作り上げた映像を上映し、さらに音楽や効果音、光、香りなどの要素を加えて、来場者に圧倒的な没入感を体験してもらおうとするエンタメ型プログラム。会場の壁面や床面をシームレスにつなぎ合わせ、360度ぐるりと映像が広がるような大掛かりなプログラムもある。

 最近はイマーシブ展の開催が相次ぎ、日本では常に何かしらの作品が上映されているという状況だが、筆者はこの「クリムト・アライブ」の開幕を心待ちにしていた。というのも、「クリムト・アライブ」はオーストラリアのメルボルンに本社を置くGrande Experiences社の企画制作。同社が制作した作品はこれまで「ゴッホ・アライブ」「モネ&フレンズ・アライブ」の2本が日本で公開されており、いずれも完成度が高く、華やかな映像と音楽に圧倒された。

 そして、開幕を楽しみにしていた最大の理由は何といっても「クリムト」という題材だ。オーストリア出身の画家グスタフ・クリムト(1862-1918)は生涯にわたって新しい芸術を追求し、ウィーン分離派の創設メンバーにも名を連ねている。金箔や幾何学模様を用いた退廃的かつ官能的な女性像で名高く、その独自性にハマったら、「クリムト作品を一点でも多く見たい」と願わずにはいられない。