中小企業で広がる外国人雇用、その力をどう生かす?(写真:cake_and_steak/イメージマート)
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~ 中小企業の今とこれからを描く ~
日本政策金融公庫総合研究所では、中小企業の今とこれからの姿をさまざまな角度から追うことで、社会の課題解決の手がかりを得ようとしています。最新の調査結果を、当研究所の研究員が交代で紹介していきます。今回のテーマは中小企業と外国人雇用です。

(西山 聡志・原澤 大地:日本政策金融公庫総合研究所) 

小さな事業所で広がる外国人雇用

 外国人を雇用する動きが広がっている。厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」によると、外国人を雇用している事業所(以下、外国人雇用事業所)の数は、2008年には7万6811所だったが、2024年には34万2087所と、約4.5倍に増加した(図1)。

図1:外国人雇用事業所数の推移(事業所規模別)(資料:厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」) 注)外国人に在留資格が外交、公用である者、特別永住者は含まない。2009年以前と2010年以降で事業所規模の区分が異なるため、2009年までは総数のみを示した。

 図1をみると、2014年を境に外国人雇用事業所数の増加ペースが加速していることがわかる。この背景にあるのが、中小企業による外国人雇用の広がりである。

 2024年の外国人雇用事業所数を事業所規模別にみると、「30人未満」が21万3517所、「30~99人」が5万8864所、「100~499人」が3万3789所、「500人以上」が1万318所、「不明」が2万5599所と、小規模な事業所が大半を占める。2014年以降の事業所規模別の伸び率(前年比)をみても、全期間を通じて「30人未満」が最も高い。

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広がる外国人雇用―経営の最前線に学ぶ課題、工夫、成果―|同友館オンライン 人手不足の深刻化や国際化の進展により、外国人を雇用する企業が増えています。外国人雇用に当たって企業が抱えている課題や行っている工夫、そして外国人雇用を通じて得られた成果について、アンケートとヒアリングをもとに分析した一冊です。

中小企業が外国人を雇用する理由

 当研究所が2024年9月から10月にかけて実施した「中小企業等における外国人雇用に関するアンケート」では、外国人従業員が「いる」と回答した企業に、外国人を雇用する理由を尋ねている。それによると、「人手が足りないから」と回答した企業の割合が66.5%と最も高い(図2)。

 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)をみると、この10年間、大企業よりも中小企業のマイナス幅が大きく、人手不足感が強い傾向が続いている。そうしたなか、日本人だけでは事業の維持や拡大が難しくなったため、外国人を雇用するようになった中小企業が増えていると思われる。

図2:外国人を雇用する理由(資料:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業等における外国人雇用に関するアンケート」<2024年>) 注)nは回答数。本調査は日本政策金融公庫の融資先のうち創業が2019年以前の法人を対象に実施したものであるため、調査結果が必ずしも中小企業全体の実態と一致するとは限らない。

 ただし、外国人雇用は人手を補填するためだけの手段ではない。実際に外国人を雇用する中小企業のなかには、外国人雇用を契機として社内が活性化したり、事業が成長したりと、企業として進化を遂げたところも存在する。

 今回は、さまざまな理由から外国人を雇用し、多くの成果を得ている4社の中小企業を紹介したい。