「脱・仕事ファースト」の社員が増えている(写真はイメージ、imtmphoto/Shutterstock.com)
(川上 敬太郎:ワークスタイル研究家)
「ハッスルカルチャー」とは対極のスタンスを持つビジネスパーソン
「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉が登場したのは2022年でした。仕事に対して頑張りすぎるのをやめて、必要最低限の業務のみをこなす働き方のことを指します。一部の層で流行している印象でしたが、3年経っても時折耳にするほど静かな広がりを見せています。
また、その翌年には、「カタツムリ女子」という言葉も登場しました。時にはゆっくりと進みながら、自分のペースで仕事をこなしていくスタイルの女性たちを象徴しています。
これら静かな退職やカタツムリ女子に共通しているのは、仕事ファーストで前のめりに取り組むことを美徳とする、いわゆるハッスルカルチャーとは対極のスタンスです。決して仕事を放棄するわけではありませんし、実際に退職を選ぶわけでもありません。しかし、仕事が一番ではないという価値観を持っています。
モーレツに働くことが当たり前とされてきたビジネスパーソン像とは相いれない、そんな「脱・仕事ファースト」な社員たちと職場はどう向き合い、どうマネジメントすればよいのでしょうか。
「24時間仕事しろ」──これは、30年近く前、私が社会に出て間もないころに尊敬する上司からかけられた言葉です。もちろん、本当に寝ずに働けというブラックな命令をされたわけではありません。常に仕事への意識を持ち、一所懸命に取り組むという心構えの教えです。
その言葉が胸に刻まれてから、教えを実践する日々を過ごしました。