参院選後、「コメ」を初めて切り札に

——日本国内では7月20日に参議院選挙がありました。参院選後というタイミングはどう見ますか。

細川:これまで赤澤大臣は「コメ」のコの字すら言わせてもらえませんでした。参院選まで赤澤大臣をがんじがらめにしたのは、「農業を犠牲にするな」とする森山裕幹事長を中心とする自民党農林族と、その意を受け入れた石破首相です。

 結局、77万トンの「ミニマムアクセス(最低輸入量)」枠内で調達量を増やすことになりましたが、量としては正直、たいしたことはありません。しかし、トランプ氏にとってみれば市場をこじ開けたという成果になるので、もっと早くからコメのコの字ぐらい赤澤大臣に言わせてあげても良かったと思います。

握手するトランプ大統領(左)と赤澤経済再生担当相(出所:スカビノ大統領次席補佐官のXより)

——参院選が終わった後ぐらいに合意するだろうと予想されていましたか?

細川:はい。ただ、7月中に交渉がまとまらず、8月いっぱい続けていくシナリオも最悪予想していました。私の考えていたいくつかのシナリオの中では、米国サイドの政治事情というラッキーな要因もあり、いい結果となったと思います。

——他国の合意内容と比べると、日本の合意内容はどのように評価できますか。

細川:相互関税は15%で、イギリスの10%と比べて負けたと思うかもしれません。しかし、米国はイギリスに対して貿易黒字、日本に対しては貿易赤字で、立場が根本的に異なります。

 さらにフィリピンとインドネシアは19%で、ベトナムは20%。日本よりも高い関税がかけられています。しかも、これらの国は米国からの輸入品にかける関税を0(ゼロ)にする犠牲も払っています。そうしたことを踏まえると、日本の相互関税15%は産業界の負担は依然あっても決して悪くない仕上がりです。