FIREしても楽しくなかった
たーちゃん:2012年にMBO(経営陣が参加する買収)により上場廃止になった「立飛企業(現・立飛ホールディングス)」です。1924年創業の老舗企業で、東京都立川市の広大な工場跡地を利用して不動産事業を展開していました。
上場企業は有価証券報告書に、相当昔に取得した土地や株式を当時の価格で記しています。資産の売却や、MBO、TOB(株式公開買い付け)時における資産再評価では現在の価値で算定されるので株価上昇要因になります。相当昔、安く取得した土地や株式が、数十年保有していたために価格が跳ね上がる、というイメージです。
——ほかに資産バリュー株の例はありますか。
たーちゃん:代表格は1937年創業の「昭和飛行機工業」(2020年上場廃止)です。東京都昭島市に不動産を有していました。2019年に日立金属(2022年に上場廃止)がTOBを発表した際に、株価が急騰しました。現在上場している中では、コメの包装材を製造している昭和パックスが挙げられます。現預金や土地を持っていますが(編集部注:2025年3月期は総資産約333億円、うち現預金89億円、土地9億円)、PBR(株価純資産倍率)は7月上旬時点で0.3 倍台です。
——これだけの資産があればFIREも考えたのでは。
たーちゃん:38歳の時に一度勤務を辞めて専業投資家になりました。ただ、私の投資スタイルは中長期保有なので、そんなに忙しくはありません。ゲームをしたり、雀荘通いをしたりしましたが、暇なことが苦痛で、結局半年で見切りを付けました。
「自分は、仕事が嫌いなわけではないのだ」とも気づきました。現在は、体調のことも考えて仕事量をセーブしながら、週2日、麻酔科医として勤務し、2週間に一度、経営しているボルダリングジムに顔を出します。自らの読み通りに株価が動くことが楽しくて株式投資を続けてきたわけですが、やはり人間の基本は労働にあると思います。
(前編)50万円→資産70億円!個人投資家たーちゃんが明かす、いま注目のセクターと銘柄…シクリカルバリュー株とは?
※本記事は特定の投資対象を推奨するものではなく、あくまで個人の投資経験を紹介するものです。実際の投資や売買に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。



