今年5月のビットコインカンファレンスではJ・D・バンス米副大統領が基調講演した(写真:ロイター/アフロ)
ビットコインが1BTC=12万ドルを突破し、史上最高値を更新した。2025年5月の高値更新後は、米中貿易摩擦や中東の地政学リスクを背景に一時軟調となったが、直近ではリスク資産全体への資金流入とともに上昇基調を強めている。市場心理の回復が進むなか、何がビットコインの上昇を支えているのか? マクロ環境と制度面の最新動向を踏まえ、今後の相場の行方を読み解く。
(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)
米国株とともに上昇
ビットコインの足元の上昇は、米国株との連動性を強めながら進行している。背景には、トランプ政権の政策に対する市場の「慣れ」と、財政・金融の両面における緩和的環境がある。
かつてはトランプ大統領の強硬な通商政策によって市場のボラティリティが高まってきたが、現在はその発言や対応が市場に十分織り込まれており、過剰反応は限定的となっている。
まず、2025年7月9日に予定されていた各国相互関税の上乗せ停止期限が8月1日へと延期され、貿易摩擦への懸念が一時的に後退している。この措置は、通商協議の余地を残す意図と捉えられ、市場ではむしろ交渉戦略の一環として楽観視されている。
実際、ベトナムやインドネシアなどが合意に至ったほか、日本やEUとの交渉も前進が期待されており、各国との協議が加速している。
同時に、2025年7月4日にトランプ大統領が掲げる大型減税・歳出法案が成立し、トランプ政策の不透明感が解消されつつある。法案成立を受け、財政赤字の拡大を懸念する声も大きいが、米国政府の債務上限引き上げ条項が盛り込まれたことでデフォルトリスクが一時的に後退し、市場の安心感につながっている。
一方、6月の米雇用統計や消費者物価指数を踏まえ、7月のFOMCでは金利据え置きが見込まれている。トランプ大統領による強い利下げ要求に対し、FRBは独立して慎重な姿勢を維持しているが、年内の利下げ方針は維持しており、9月以降の利下げ観測がリスク資産全体の支援材料となっている。
出所:Bloombergよりマネックス証券作成
こうした環境のもと、株式市場ではナスダック総合指数が7月に入り連日で史上最高値を更新しており、ビットコインも同様にリスク選好の波に乗る形で高騰している。
背後では、2025年に入って再び増加傾向にある米国のマネーサプライの影響もあり、流動性相場の再来がビットコインの上昇を下支えしている側面もある。