参院選東京選挙区の選挙ポスター(写真:つのだよしお/アフロ)
※本連載を担当する西田亮介氏がMCを務めるYouTube番組『西田亮介の週刊時評@ライブ』で、2025年7月22日(火)午後8時より、参院選を振り返るライブ配信をします!詳しくは、本記事最終ページの告知をご覧ください。
(西田 亮介:日本大学危機管理学部教授、社会学者)
勢い目覚ましい新興勢力、そこには理由がある
参院選に関連して、前後から複数の新興政党の勢いが目覚ましい。
「外国人問題」は、大政党や候補者も追加公約として掲げたり、街頭で言及するようになったりと、こぞって後追いして争点化された。良し悪しを別にして、大政党の間隙を縫うかのような存在感を見せている。
実際に、自民党は追加公約で「外国人労働者の適正な受入れ」を強調し、立憲民主党も「多文化共生社会の実現」を掲げるなど、新興政党が先鞭をつけた論点を既存政党も無視できなくなっている。
いくつかの新興政党の支持率は大政党を喰う勢いで、躍進の可能性も報じられていることは既知のとおりだ。批判も声高だが、それ自体も自らのエネルギーにするかのような勢いを見せる。
SNSでの炎上や批判的な報道さえも、知名度向上の機会として活用する戦略的な動きも見られる。
既存主要政党に対する不信感や不満、長期化する実質賃金低下などを背景にしているものと思われるし、政治への注目それ自体は、無投票選挙の割合が高まるなど成り手不足が著しい地方政治を想起しても好ましいことに思われる。国民の生活実感と政治への不信が重なっている。
東京都議選もそうだったが、期日前投票も活発化するなど、にわかに政治に対する関心が高まっている機運も感じられる。2025年の東京都議選では期日前投票者数が過去最多を記録し、今回の参院選でも同様の傾向が見られる。
◎期日前投票が過去最多ペース…投票日が連休中日が影響、与野党伯仲で関心高まりも : 読売新聞オンライン
読売新聞オンラインの報道によると、2025年参院選の期日前投票が過去最多ペースで推移している。投票日が3連休中日に当たることや、与野党の伯仲した選挙戦への関心の高まりが背景にある。
しかし同時に政治や行政に関連した「良識」や「常識」、例えばロバート・ライシュがいうところの「コモン・グッド」が失われており、取り戻す必要があるという分析などは、本邦の最近の政治のあり方を見ていても耳を傾けなければならない点があるようにも思われる。
ライシュの『コモン・グッド』(2018年)で提示された「共通善」の概念は、個人の利益ではない社会全体の利益を追求する政治文化の重要性を説いている。
だが、日本政治では、政策よりも話題性や注目度を重視する傾向が強まっているようにも見える。
筆者は仕事柄、政党の代表らの話を引き出す場面がよくある。先日、話を聞いた複数の新興小政党の代表や関係者は、政策やその一貫性を重要視しないということをかなりはっきりと明言した。
◎YouTubeチャンネル「ReHacQ」
一人は、「現代は危機的で、不確実な時代である。個々の政策よりも、その不確実な時代をサバイバルし続けているという実績こそ評価してほしい」という趣旨のことをいう。
この発言は、コロナ禍、ウクライナ戦争、急激な円安とインフレといった予測困難な事態が連続する中で、従来の政策論議の枠組みそのものが機能不全に陥っているという現実認識を反映している。
実際に、2020年からの3年間で、日本の政治は感染症対策、経済支援、外交・安全保障政策など、従来の政策体系では対応が困難な課題に直面し続けてきた。
もう一人の代表は、「ネットを起点とする政党で、人を集めるためには、少し過激な発言も必要だったが、議席を有する公党になったため、理想と現実を両方見るようになってきた。(また状況が変わる中では)主張は当然変化しうる」という趣旨のことを述べた。
過去にも多くの新興政党が最初はSNSでの話題化を通じて支持を拡大し、その後に議席獲得とともに現実的な政策路線に修正していく経路を辿っている。
どちらも一理どころかそれなり以上の理があるだけに事は重大だ。しかし、このような考え方が政治の主流になることは、有権者にとって政党選択の基準を曖昧にし、政治的責任の所在を不明確にするリスクもはらんでいる。