SNSが分極化を促進する3つのメカニズム
では、SNSがなぜ分極化に寄与するのか。既知の話も多いかもしれないが、おさらいとして代表的な3つの要因を上げておこう。
(1)エコーチェンバー現象の形成
●利用者は自分と似た意見を持つ人々と交流し、同質性の高い情報環境を形成するために、自分と意見が合うコンテンツに偏って触れることになる
(2)党派的アイデンティティの強化
●政治的でない内容でも、利用者の党派的アイデンティティや所属グループへの帰属意識を強化する
(3)極端で扇情的な内容への露出
●極端で扇情的なコンテンツや他党派への否定的な描写が拡散しやすい
●反対意見への露出が反発効果を引き起こし、分極化を増大させる
(1)や(2)などは、新聞などの既存メディアにおいてもある程度言えることである。アメリカにおいては、人々は自分と似たような意見を書いてくれる新聞を買う傾向にあることがわかっているからだ。
みんな、自分が気持ちよくなるものを読みたいのである。しかし、レコメンデーション・システムのようなアルゴリズムによるフィルターバブル現象が起きるSNS上は、この傾向をさらに助長する可能性があることには注意したい。
(3)は、怒りを煽るような記事の方がSNS上で拡散しやすい、ということが知られている。拡散すれば収益につながるため、これまでは一部の政治的扇動家に限られていた専売特許が、不特定多数の人間がその性質を利用しているわけだ。
近々実施される参院選においても、外国人に対する怒りを煽り排斥するような主張がSNS上でも多く見受けられる。また、外国人の有権者はほとんどいないことから、そうした「商売」に乗っかる政党・政治家も少なくない状況だ。欧米で起きている現象が、ついに日本上陸、といったところだろう。
海外では、SNSが外国人への憎悪犯罪につながっていることが、別の経済学の実証研究で証明されている。ドイツでの停電とFacebookの通信障害を利用した自然実験的実証研究においては、AfDのFacebookでのドイツに難民として来た外国人への怒りや不安を煽るコメントが実際にヘイトクライムにつながっていることが確認された。
この自然実験において重要なことは、SNSがなくても起きていた犯罪ではなかったということである。実際に助長する効果があったのだ。
ドイツにおいては、こうした影響もあって、ついにSNSを運営する会社にヘイトを助長するコンテンツを除去することを命じる法律が作られたが、日本においても他人事ではもはやないだろう。
これらの3つの経路を通じて、SNSは政治的分極化を推し進めている。しかし、いつ何時もSNSが政治的分断を生み出すことにはつながらない。もう一つ別の実験を見てみよう。